地上には様々な交通網が張り巡らされていて、ヒトやモノの移動を支える社会インフラになっている。では、空間はどうだろうか?ある一定の高度より上空では、飛行機やヘリコプターなどが飛行していて、ヒトやモノを運んでいる。だが、地上数百メートルという高層ビルとほぼ同じ高さにある空間を見てみると、全く利用されていないことに気づくだろう。

 この超低空の空間を有効活用しようとする実証実験が始まった。小型無人飛行機の「ドローン」を飛ばし、モノの配送に活用する試みだ。その第1回めが2016年4月11日に実施された。大型商業施設や高層マンションが立ち並ぶ人口密集エリア、千葉市の幕張新都心を舞台にして、2つのシナリオで実施された。

図1●千葉市が実証実験を実施する幕張新都心エリア(出所:首相官邸サイトの「東京圏 国家戦略特別区域会議」の「第1回 千葉市ドローン宅配等分科会 配布資料」で公開されている「資料4」から抜粋)
図1●千葉市が実証実験を実施する幕張新都心エリア(出所:首相官邸サイトの「東京圏 国家戦略特別区域会議」の「第1回 千葉市ドローン宅配等分科会 配布資料」で公開されている「資料4」から抜粋)
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重い荷物はドローンで駐車場まで配送

 まず1つめは、大型商業施設の来店客が自分で運ぶには重たい商品を購入したので、その商品を駐車場にとめてある自分の車まで配送してもらうというシナリオ。実験では、1本のワインボトルを積み込んだドローンをイオンモール幕張新都心の屋上から飛ばし、施設内にある屋外公園の指定位置まで配送する形で検証した。

図2●イオンモール幕張新都心の屋上から施設内にある屋外公園までワインボトルを配送したときの飛行経路
図2●イオンモール幕張新都心の屋上から施設内にある屋外公園までワインボトルを配送したときの飛行経路
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 取材関係者は、サークルで指定された着陸地点のある屋外公園で待機していた。しばらくすると、屋上を飛び立つドローンの姿が見えた。屋上の高さは地上から約25メートル。ドローンは、そこからさらに10メートル上空まで垂直に上昇した。そこで数秒ほど停止した後、着陸地点に向かって斜め下の方向へと動きだした。着陸地点の上空10メートルに到着すると、再び数秒ほど停止。それから垂直に降下し、着陸地点のサークルからはみ出すことなく着陸した。離陸から着陸までの所要時間は、2分ほどだった。

図3●着陸地点に指定したサークル内に着陸した
図3●着陸地点に指定したサークル内に着陸した
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