4月の新年度スタートとともに、政府機関に新しい幹部職が一斉に配置された。「サイバーセキュリティ・情報化審議官」である。各府省での情報システムの適切な運用管理とサイバーセキュリティ対策、加えてこれらと一体となった業務改革などを専任で指揮監督するのがミッションである。

 これまで各府省庁には、CIO(情報化統括責任者)とCISO(最高情報セキュリティ責任者)を設置していたものの、局長級の官房長などが兼務するケースが大半で、必ずしも実効性がある体制とは言えなかった。新設したサイバーセキュリティ・情報化審議官は部長級の官職で、原則として専任である。CIO/CISOを直接補佐して、庁内のITシステムの管理やサイバーセキュリティ対策を推進する実質的な司令塔となる。

 国の行政機関12府省のうち4月1日付でサイバーセキュリティ・情報化審議官を設置したのは、総務省、法務省、財務省、農林水産省、国土交通省、環境省、防衛省。内閣府と外務省は、課長級の「サイバーセキュリティ・情報化参事官」を置いた。文部科学省は従来の政策評価審議官を「サイバーセキュリティ・政策評価審議官」に改め、サイバーセキュリティ分野の職務を追加した。

 厚生労働省は、日本年金機構での情報漏えい事件を受け2015年10月1日付の組織改革で設けた「情報政策・政策評価審議官」が、サイバーセキュリティ・情報化審議官と同じ役割を担う。同省は7~8月の組織改編時に名称を他府省にそろえる方針だ。

 やや異色なのが経済産業省。サイバーセキュリティ・情報化審議官を設置するものの、政令の施行は5月1日付となる。他府省が内部任用したのに対し、2月から3月にかけて審議官級の任期付き職員として公募をかけた。

 他府省の審議官は業務の対象が省内または管轄する独立行政法人などまでに閉じているのに対し、経産省では加えて企業などの情報セキュリティに関する政策の企画・立案・推進までも業務として想定している。このため、必要となる知識・経験が、内部任用では賄えないと判断したようだ。雇用期間は3年程度で、常勤の職員として勤務する。

 このほか、警察庁と人事院事務総局もサイバーセキュリティ・情報化審議官を4月1日付で設置。公正取引委員会と会計検査院でも、それぞれの事務総局官房にサイバーセキュリティ・情報化参事官を置いた。主要な政府機関に、システム運用管理と業務改革、サイバーセキュリティ対策を担う専任の幹部職員が配置されたことになる。