2016年3月10日、インターネットガバナンスに重要な転機が訪れたことをご存じだろうか。インターネットを運用するのに必要なIPアドレスやドメイン名の管理が米国政府の手を離れ、インターネットコミュニティに移管されようとしているのだ。世間一般には知られていないテーマだが、インターネットのコミュニティではここ数年、大きな話題となっていた。

 日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)は3月30日、報道関係者向けに「インターネットは誰が管理するのか? 〜米国管理からの脱却に向け前進」と題してトークイベントを開催した(写真1写真2)。

写真1●JPNICの山崎信氏
写真1●JPNICの山崎信氏
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写真2●左から東京大学の江崎浩氏、ICANNのジアロン・ロウ氏、APIDEのオメアー・カジ氏、JPNICの奥谷泉氏
写真2●左から東京大学の江崎浩氏、ICANNのジアロン・ロウ氏、APIDEのオメアー・カジ氏、JPNICの奥谷泉氏
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米国政府からインターネットコミュニティへ移管

 もともとインターネットは米国で誕生したものであり、そうした歴史的経緯から、インターネットの重要資源は米国政府が管理してきた。インターネットの重要資源とは、インターネットを動かすための情報である。具体的には、(1)ドメイン名、(2)IPアドレス・AS番号、(3)プロトコルパラメーター(ポート番号やエラーコード番号など)――を指す。

 インターネットで通信するためには、これらの情報の一意性を担保しなければならず、そのためには何らかの組織が一元管理する必要がある。その役を米国政府が担っていたわけだ。

 インターネットの重要資源の管理は「IANA機能」と呼ばれている。これまでは、米国政府がIANA機能の運営を委託するという形をとっていた。それを今後は、米国政府ではなく、ドメイン名コミュニティ(ICANNのGNSO、ccNSO)、番号資源コミュニティ(5つのRIR)、プロトコルコミュニティ(IETF)という三つの独立したインターネットコミュニティが受け持つことになるという(写真3)。

写真3●IANA監督権限の移管前と移管後の比較
写真3●IANA監督権限の移管前と移管後の比較
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