クラウドの巨人、アマゾンの快走が止まらない。クラウドサービス「AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)」へ情報システムを移行する流れが日本で本格化してきた。仮想マシン「Amazon EC2」やストレージ「同 S3/RDS」といったサービス(インスタンス)をレンタルすることで、リソース調達や運用管理の手間を省けることがメリット。ITインフラを社内(オンプレミス)で所有・運用することに限界を感じたユーザー企業が、雪崩を打ってAWSへ向かい始めた(写真1)。

写真1●アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)
写真1●アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)
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 AWSの引力は基幹系システムにも及んでいる。旭硝子は、価格面や機能面からクラウドサービスを比較し2014年4月にAWSを採用。ホストで稼働中の基幹システムの移行を進めているところだ。あるクラウドベンダーがAWSの公開事例を分析したところ「日本の事例の78%が基幹系だった」という。

 基幹系への広がりを象徴するのが、欧州SAPのERP(統合基幹業務システム)をAWSに移行するユーザー企業の増加である。ミサワホームや旭硝子、オンワード樫山やケンコーコム、HOYAなど、業種や規模に無関係な顔ぶれにAWSの引力の強さを感じる。協和発酵キリン 情報システム部長の篠田敏幸氏は、「オンプレミスからAWSへ移行したことでSAPは相当安く使えるようになった」と効果を語る。

 AWSが目指すのは、企業情報システムの総取りだ。今は「開発・検証」や「既存インフラの補強」の用途にとどまるユーザー企業の背中を押し、最終的に全システムをAWSに巻き取ろうと目論む。日本通運や丸紅のように、AWSへの全面移行を掲げる例も出てきた。

 だが、クラウド一人勝ちのAWSにも危うさはある。日経コンピュータ4月2日号の特集記事「台頭するハイブリッドクラウド」の取材を通じ、筆者はそう感じた。危うさはAWSの強さと背中合わせだ。

 筆者がAWSに感じる強みは二つある。