シリコンバレーのスタートアップには、ある共通点がある。それはどの会社のオフィスも、似た感じで「こじゃれている」こと。記者は当初「何かの流行りだろう」ぐらいにしか思っていなかったのだが、実はそこには、シリコンバレーの大きな秘密が隠されていた。
まずは最近のスタートアップのオフィスがどうこじゃれているのか、写真を交えて説明しよう。
オフィスに足を踏み入れてまず気付くのは、フロアがオープンであることだ(写真1)。フロアは全体が見渡せる広々とした空間になっていて、開発者は立ったり座ったり、思い思いの姿勢でプログラミングに励んでいる。
米国のソフトウエア会社というと、「開発者が作業に集中できるよう、デスクの周りはパーティションで囲まれていて、プライバシーが保たれている」という印象があった。米Microsoftなどは、個室を開発者に与えていたことで有名だったほどだ。しかしスタートアップのオフィスはそれとは正反対。パーティションで囲まれた「キュービクル(Cubicle)」は、まず見かけない。
フロアの所々には、一息ついたり談笑したりできるスペースが設けられている(写真2)。座り心地の良さそうなソファーが並んでいて、膝詰めで会話できるようになっている。そういったリラックスできるスペースの側には、ビリヤード台のような娯楽設備が置かれていることもある。
オフィスフロアの中に、キッチンがあるケースも多い(写真3)。キッチンには冷たい飲み物やコーヒー、チョコレートやスナックなどが常備。みんなで食事ができるような大きなテーブルがあって、朝には朝食用のマフィンが、昼にはケータリングのランチなどが並んでいたりする。
オフィスの壁に目を転じると、そこは一面のホワイトボードだ(写真4)。マジックペンで様々な図が描かれていたり、メモが書き込まれた色とりどりの付せんがはってあったりする。ホワイトボードは移動可能な場合もある。
会議室や打ち合わせスペース、廊下の壁も全面がホワイトボードだったりする(写真5)。
記者が不思議に感じていたのは、こうした従来の米国オフィスとは明らかに異なるこじゃれたオフィスを、多くのスタートアップが足並みを揃えて採用していたことだった。