筆者が初めて銀行のキャッシュカードを作ったのは、大学進学で上京したときだ。都内では既にメガバンクが網の目のように支店を張り巡らせており、あっさりとメガバンクを選んだ記憶がある。当時の筆者の目に地方銀行は恐らく入っていなかった。

 それから10年余りが経った今、地銀業界は筆者が最も注目している分野の一つになっている。同業界に広く浸透したシステム共同化の枠組みを基に、新たな動きが次々と起こっているからだ。

地銀業界に存在する2種類のグループ

 地銀は現在、全国に105行ある。最も多いのは福岡県で、5行が本店を構える。東京都・大阪府・静岡県には4行がひしめく。それ以外も2~3行はあるのが標準的で、1行しか地銀がないのは石川県・山梨県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県・鳥取県だけと少数だ。

写真1●横浜銀行本店の様子
写真1●横浜銀行本店の様子

 地銀各行の2014年4~12月期決算は軒並み堅調で、最高益を叩き出した横浜銀行は20年ぶりのベアに踏み切った(写真1)。しかし中長期で見た場合、地銀を取り巻く経営環境は厳しい。地方人口の流出は続き、資金需要は伸び悩む。それに、昨今の低金利による融資収益の低下が拍車をかける。

 メガバンクやゆうちょ銀行も全国に支店を展開するなか、105に上る地銀が単独で伍していくのは容易ではない。こうした背景もあり、地銀業界は2種類の“グループ”を作り上げてきた。

 一つは、持ち株会社を単位としたものだ。2015年3月27日には、鹿児島銀行と熊本県・肥後銀行が経営統合に最終合意した旨を正式発表し、10月1日付けで九州フィナンシャルグループ(FG)を設立する。ほかにも、2014年10月1日に誕生した東京都民銀行と東京都・八千代銀行の東京TYフィナンシャルグループなどがある。ちなみに現在の最大手は、福岡銀行や熊本銀行を傘下に持つふくおかフィナンシャルグループである。

 もう一つは、基幹系システムを共同利用しているという“縁”を単位としたものだ。システム共同化は、勘定系システムにかかる巨額の開発、保守、運用費用を、複数の地銀で割り勘しようとする試みだ。2000年代前半に始まり、今では地銀の7~8割がいずれかの共同化グループに参加している。このシステム共同化グループの動きが今、熱い。