東京オリンピック・パラリンピックを迎える2020年、セキュリティ人材が19万人以上足りない――。政府の内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)はこの危機感の下、経済産業省や総務省、文部科学省とともに明日からの2017年度、セキュリティ人材の育成を加速させる。

 不足分のベースとなるのが、経産省が2016年に公表した調査。これによれば、セキュリティ人材は2016年時点で28万870人で、13万2060人が不足している。何の手当てもしなければ2020年に19万3010人が不足するというから、不足率はざっと3割というところだ。

情報セキュリティ人材の不足数と将来推計結果
情報セキュリティ人材の不足数と将来推計結果
(出所:経済産業省)
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 各省が目標値を出している取り組みだけでも、2017年度だけで3200人を超えるセキュリティ人材が誕生する見込みだ。最も人数が多いのが総務省が主催し、情報通信研究機構(NICT)が運営する「実践的サイバー防御演習(CYDER、サイダー)」だ。

 中央官庁や都道府県、市町村、独立行政法人、重要インフラ事業者などでインシデント(事故)対応に当たる実務者を、1日半の研修で育てる。マイナンバー制度の開始でさらにセキュリティ向上が求められる地方自治体での実務者を増やすため、2017年度は全国で100回の研修を開き、育成者数は2016年度の2倍になる3000人を目指す。自治体職員が参加しやすいように研修期間を1日に短縮することも検討しているという。

総務省 情報流通行政局 情報流通振興課 情報セキュリティ対策室の道方孝志課長補佐(左)と情報通信研究機構(NICT) セキュリティ人材育成研究センターの井田俊輔シニアマネージャー
総務省 情報流通行政局 情報流通振興課 情報セキュリティ対策室の道方孝志課長補佐(左)と情報通信研究機構(NICT) セキュリティ人材育成研究センターの井田俊輔シニアマネージャー
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 経産省はこの4月、情報処理推進機構(IPA)内に「産業サイバーセキュリティセンター」を組織化し、経営層と現場の実務者をつなぐ役目の「橋渡し人材」を1年かけて100人育てる。情報システムはもちろん、制御システムを含む社会インフラシステムのセキュリティを学ぶ。受講料は300万円だが、既に電力やガス、鉄道、自動車などの30社以上が参加を表明している。

 3200人にはカウントしていないが、経産省は従来のセキュリティ技術者向けの情報処理技術者試験「情報セキュリティスペシャリスト試験」をセキュリティ分野初の国家資格に“格上げ”した「情報処理安全確保支援士資格(登録セキスペ)」について、2020年度までに3万人の登録を見込む。既に2017年1月の初回登録には4175人の申請があった。

経済産業省 商務情報政策局 地域情報化人材育成推進室の藤岡伸嘉室長
経済産業省 商務情報政策局 地域情報化人材育成推進室の藤岡伸嘉室長
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