どうも私はIT業界の人たちから、オオカミ少年だと思われているらしい。随分前から「SI(システムインテグレーション)ビジネスの終焉」を騒ぎ立てていたが、SIビジネスは幾多の不況期を乗り越え、しぶとく生き残ってきた。だから私がオオカミ少年だと言われるのは、まあ仕方が無い。だが、あえてまた言う。「今度は本当にオオカミがやって来る」。SIerの余命はあと5年である。

 SIビジネスはユーザー企業などからシステム構築を請け負う人月商売だが、日本では“SIガラパゴス”と呼ぶ、世界に類を見ない多重下請け構造のエコシステム(生態系)を発達させてきた。このSIガラパゴスには、零細ベンダーも含めると約1万5000社がひしめき、元請けのSIerを頂点に、顧客である企業や公共機関のシステム構築に関するあらゆるニーズ(≒わがまま)に対応してきた。

 これは、システム構築ではERP(統合基幹業務システム)をそのまま使ったり、ユーザー企業が自ら内製したりするのが当たり前の米国などでは考えられないことだ。日本の場合、ユーザー企業がERPなどパッケージ製品を使えば済むような基幹系システムまでも独自開発にこだわり、にもかかわらず開発を外部に丸投げしてくれた。つまりSIガラパゴスは、ユーザー企業のIT資金の無駄遣いに支えられていたわけだ。

 私は以前から、ユーザー企業がそんなIT資金の無駄遣いにそろそろ気付くだろうと思っていた。カネを稼がない基幹系システムに大金を投じるのは愚かなことである。そんなわけで私は、日本型のSIビジネスやSIガラパゴスの繁栄は長く続かないと踏んでいた。だがユーザー企業のIT部門は、予想以上に無駄ガネを投じ続けた。その結果、私はオオカミ少年になったわけだ。

 それでも今回、「本当にオオカミが来る」と言いきれる。しかも、SIerあるいはSIガラパゴスの余命は5年とも宣言できる。「未来の事なんて分からない」とよく言うが、実は今、日本でこれから起こること、あるいはSIerなどの身に降りかかることが極めて正確に予測できるようになっている。ぼんやりと人月商売の草をはんでいるだけだと、オオカミ(時代の流れ)に食い殺されるのは必定である。