筆者は以前、「残念な上司」について考察したことがある。ITproにも過去に「部下は『残念な上司』を口癖で見抜く」という記事を書き、大きな反響をいただいた。

 そもそも“残念”な人とは、「能力もやる気もあるのに、成果を上げられないでいるビジネスパーソン」を指すと定義した。「もったいない人」と言い換えることもできるだろう。 そして職場を見渡してみると、残念な人は「残念な上司」と「残念な部下」の両方があり得ることにも気づいた。

残念な部下は残念な上司が“育てる”

 ただし、当時取材を続けるなかで、能力もやる気もあるのに残念な部下になってしまっている人の多くが、残念な上司によって“量産”されているという事実に行き着いた。その話も過去のITproで「残念な部下が『残念な上司』に量産される不幸」という記事にまとめている。

 量産の過程で頻出する典型的な傾向が、上司のある種の口癖だ。「これ、やっといて」「後はよろしく」といった、普段何気なく発せられる上司のセリフに端的に表れる。

 これだけだと、部下に頼んだ仕事にどんな目的があって、どんな成果を期待したいのか、いつまでに提出すればよいのかといった内容が全く含まれていない。そのため、部下からは上司がイメージするような成果物は出てこないし、仕事の納期や優先順位を間違える原因にもなる。

 結果、多くの仕事がやり直しになる。能力とやる気が空回りしてしまっている。残念な部下は、こうして残念な上司によって量産されていくのである。

 実はこのときの考察に似た話題を、最近久しぶりに耳にした。現在、日経情報ストラテジーの誌面で「抵抗勢力との向き合い方」などを連載しているケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズの榊巻亮氏とのやり取りのなかでだ。

 榊巻氏は、業務改革支援の請負人として数々のプロジェクトを推進してきた人物である。「成功率9割」と、非常に高い“打率”を誇る。そんな榊巻氏にとっての大きな仕事が、プロジェクト関係者との合意形成である。その過程では、プロジェクトの目的や意味、達成すべきことなどを、相手にしっかりと伝える作業が欠かせない。そして意思疎通のツールとして不可欠なのが「伝わる資料作り」だという。