筆者は本を読み終えたらすぐに手放してしまうのだが、長年手元に置いている本が何冊かある。その中の1冊が『考える技術・書く技術 説得力を高めるピラミッド原則』(バーバラ・ミント著、株式会社グロービス監修、山崎康司訳、ダイヤモンド社発行)だ。

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 奥付を見ると「1995年8月22日 7版発行」となっており、古本屋で買ったわけではなく新しい本だったので、もう20年も前に購入したことになる。

 この本を買ったときはIT技術者だった。記憶は定かではないが、何らかのビジネス文書を書かねばならず、どのように書けばいいか分からず困ってしまい、この本に出合った。

 本を読んで一番驚いたことは、「考える」ことには「技術がある」ということだった。それは今でも鮮明に覚えている。考えることはそれまでもやっていたつもりでいたが、文字通り「ただ考える」だけであり、ノウハウやスキルに基づいていたわけではない。

 手元の本の目次を見ると、「トップダウン型アプローチ」「ボトムアップ型アプローチ」「演繹的論法」「帰納的論法」「ロジックツリー」といった言葉が並ぶ。これらをひと言で表現すれば「ロジカルシンキング」となろう。

 筆者はロジカルシンキングに関わる本をその後、何冊も読んできた。しかし、正直にいえば、いまだにロジカルシンキングを使いこなせているとは思えない。もう20年の積み重ねがあるというのに、我ながらあきれてしまう。

 『考える技術・書く技術』は当時難しく感じ、どこまで理解できたか分からない。ただその後読んだロジカルシンキングの本はおおむね理解できたつもりでいる。だが、いざ自分の目の前の仕事に展開しようとしても、「ロジカルシンキングをしっかり使っている」という手応えはあまりない。いまだに使いこなせないから、『考える技術・書く技術』を手放さないでいるのだろう。