地方創生に資する地域情報化の先進事例を表彰する「地域情報化大賞2015」の表彰式が3月9日に東京都内で開催された。表彰事例は1月22日に発表済み(総務省発表資料)だが、受賞者が一堂に会する披露の場は表彰式が初めてである。

 地域情報化大賞は、2003年度から日本経済新聞社が主催・表彰を始め、2014年度からは総務省の事業として実施している。2015年度は10月9日~11月13日の募集期間に、地域活性化部門(公共部門)に58件、地域サービス創生部門(民間部門)に27件の応募があった。応募総数は前年度の94件から85件へと微減した。

 大賞/総務大臣賞を受賞したのは、公立はこだて未来大学 マリンIT・ラボ(北海道函館市)による「IT漁業による地方創生」。位置情報を収集する小型のセンサーノードと、漁獲情報を記録する操業日誌アプリを載せたiPadを、留萌市のナマコ漁船全16隻が持ち込むことで、水産資源を可視化。漁師間での資源管理に関する合意形成を通じて、乱獲で枯渇の危機にあったナマコ資源のV字回復につなげた。

 また、小型・安価な海洋観測ブイを開発して各地の沿岸に展開することで、地球温暖化に伴う海水温の変化が養殖業や定置網漁業に及ぼす影響の予測や対策に効果を発揮している。

 大賞が審査会(会長:國領二郎慶応義塾大学総合政策学部教授)の審査で選ばれたのに対し、総務省が地域の自立・活性化のために派遣している地域情報化アドバイザーによる投票で選ばれたのが、アドバイザー賞。こちらは、一般財団法人の島前ふるさと魅力化財団 隠岐國学習センター(島根県海士町)による「小規模校集合体バーチャルクラス(クラウド遠隔授業システム)」が受賞した。

 同センターは、離島である島前地域3島の3町村が共同出資した公立塾であり、中学生・高校生・社会人を対象に3島および国内各地を結んでiPadによる遠隔授業を実施している。例えば、小規模校の生徒をクラウド上のバーチャルクラスに集めてリアルの中学校では難しい習熟度別授業を実施することで、学習効果を高めたり、多様な人との交わりを通してコミュニケーション力や協働力の向上に結び付けたりしている。

 審査会長の國領教授は、大賞では漁業という地域の中核産業の高度化・付加価値化にICTを活用している点を、アドバイザー賞では人口減少・少子高齢化という地域課題に正面から向き合い持続可能な地域づくりに不可欠な人材育成や重要公共サービスの維持をICTを活用して実現している点を評価したと講評。すべての応募事例を通じて全体のレベルが上がっていること、首長・地域団体・企業・大学など取り組み主体の幅が広がっていることを指摘して、「そう簡単には横展開できないことは分かっているが、より多くの人がこうした事例を共有すれば日本の未来を明るい」と期待を述べた。