あまりゲームをしない筆者にとって、最近のVR(Virtual Reality)ブームは自分には無関係と思っていたのだが、大きな勘違いをしていることに気づいた。

 VRはゲームだけのテクノロジーではない。その適用範囲は広く、「関係ない」と思い込んでいた自分を今では恥じている。自分がこれまで経験したことに限っても、次のような場面は今後VRによって変わるはずだ。

 最初は、マンションを購入する場面。日本ではまだ建ってもいない状態で販売されるケースが多いので、購入希望者はあれこれ想像するしかない。筆者自身、モデルルームがあったとはいえ「外観はこんな感じかな」「この色にしたらフローリングはこんな感じ」「間取りをこうするとどうなるだろう」といろいろ想像してマンションを購入した。鍵をもらって初めて実物を見ることになるのだが、「あれ、こうなってしまうのか」と思った箇所はいくつかある。

 次は、スポーツ観戦する場面。筆者は、初めて野球場に行ったときの高揚感を今でも覚えている。小学生低学年だったと思うが、甲子園に高校野球を見に行った。そのときの感動を覚えていることもあり、今でも1年に数回野球場に足を運ぶ。球場に行けばその場でしか味わえない臨場感を得られるのは間違いない。だが、テレビで見るほど近くから見れるわけではない。もちろん、テレビでは球場の臨場感を味わえない。

 最後は芸術鑑賞だ。オペラやバレエ、能や狂言などの芸術鑑賞に敷居の高さを感じるのは筆者だけではないだろう。敷居を高く感じるのは、「理解できないのではないか」という漠然とした不安があるからだ。

実寸大で確認してから購入

 こうした場面はすべてVR、およびVR関連技術の適用範囲である。

 マンションを購入する際、今後はモデルルームや模型を見て想像するのではなく、実寸大で完成物を確認できるようになる。スポーツ観戦する際、仮想空間の中でだが、自分が競技場内にいて、選手のすぐ隣で見ることも可能だ。

 VRとよく似た技術にAR(Augmented Reality)がある。VRとは仮想空間を作る技術。それに対してARは、コンピュータで作った映像や画像を現実空間に重ね、実世界を拡張する技術である。ポケモンGOで使われている技術だ。

 もう一つMR(Mixed Reality)という言葉もある。これは現実空間と仮想空間を融合する技術の総称で、ARはMRの一種である。

 AR技術を用いれば、マンション建設予定地に出向いて、実寸大の外観を現地で確認することも可能になる。また、オペラや能などを観る際、舞台を見ながら初心者にもわかりやすく上演内容を文字で解説されるようになる。敷居の高さを感じずに済むだろう。