2020年に東京で開催されるオリンピック・パラリンピック競技大会(東京五輪)が、5年後に迫ってきた。まだ先のようでいて、時間を要する各種交通や建物などインフラ整備では、準備が着々と進んでいる。2015年1月にはNTTが、東京五輪の運営を推進する東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会と「ゴールドパートナー」の第1号として契約を締結。通信サービスを担当することを発表した。

 契約締結会見の席上、NTT持ち株会社の鵜浦博夫社長は「『おもてなし』の実現のために、様々な産業界の方々とコラボレーションする」と発言した。そこで2020年の東京五輪でのサービスについて、通信環境を取り巻く変化と合わせて考えてみた。

長野オリンピックと一変した「サービスの大前提」

 オリンピック向けにNTTが提供した通信サービスとして、筆者の頭に真っ先に浮かんだのは、1998年の長野冬季オリンピック(長野五輪)に登場した腕時計型PHSだった(写真1)。当時、筆者が長野五輪を取材したときには、残念ながらこのPHSを使っているシーンには遭遇しなかったが、調べてみると重さ45グラムで体積が30㏄という世界最小のPHSで、音声認識機能によるダイヤル操作が可能だったという。

写真1●NTTが1998年長野五輪に提供した腕時計型PHS
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写真1●NTTが1998年長野五輪に提供した腕時計型PHS
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写真1●NTTが1998年長野五輪に提供した腕時計型PHS
ウエアラブル端末が数多く登場した今から見ると当たり前に見えるが、1998年当時は音声認識機能を搭載した最先端の端末だった

 このPHSにかかわったNTTのある関係者は、当時をこう振り返る。「技術的な理由もあったが、端末もサービスもすべてキャリアが提供する垂直統合モデルだった」――。

 当時の技術レベルは、PHSの1チャンネルで音声と同期した毎秒1コマ程度のカラー画像の送受信ができる程度。通信サービスは、端末とアプリケーション(通話)、ネットワークをセットで提供する垂直統合モデルが大前提だった。

 しかし2020年を想定したサービスは、全く様相が異なる。

 2015年2月中旬、NTTが最新のR&Dの成果を紹介する「NTT R&Dフォーラム 2015」を、東京・武蔵野市のNTT武蔵野研究開発センタで開催した。グループを挙げての研究成果発表の場で、例年この時期に開催される。今回は、東京五輪パートナーとなった直後ということもあり、「おもてなし」と「スポーツ」にかかわる展示が目白押しだった。