「生産現場でのデータ活用が、次のステップに進みつつある」──昨年の暮れにオムロンの綾部工場を取材した際に、記者は強く実感した。

まずは「見える化」が先行したデータ活用

 これまでのステップは、センサーから収集したデータを分析し、その傾向を把握することが中心だった。分析した結果は、グラフやアラートといった「見える化」によって人間が識別できる表現に変換され、それを人間が参照して判断し、何らかの成果につながるアクションを起こすことに利用されていた。

 例えば、「生産設備がもうすぐ故障しそうだ」という傾向を把握する取り組み。これによって故障を事前に予兆し、生産設備が故障停止してしまう前に部品を交換できるようになる。生産効率を低下させる原因になる故障停止の解消につながる。

 「生産設備の稼動ロス」や「作業員の作業ロス」などの傾向も把握する取り組みがある。これによって、誰も気づかなかった生産現場に潜むムダをあぶりだせる。「モノが流れていないときは生産設備の電源を切っておく」「部品の段取り替え作業のやり方を見直す」といった改善策を打つことで、生産性の向上につながっていく。

分析で得た結果を生産設備にフィードバック

 次のステップでは、人間の判断を介在しない。分析結果を直接、生産設備の制御にフィードバックしてしまう。オムロンは、ファイバーセンサーの中核部品である「投光モジュール」の生産設備で、この取り組みを進めている。

 投光モジュールは、LEDを埋め込んだ「パッケージ」、LEDの光を反射させる「リフレクター」、LEDの光を集光する「レンズ」と、主に3つの部品で構成している。それぞれの部品を組み上げていく作業工程は完全に自動化されていて、最新の生産設備では30秒間隔で次々と投光モジュールが出来上がっていく。

写真1●オムロンの綾部工場が導入した投光モジュールの生産設備(出所:オムロン)
写真1●オムロンの綾部工場が導入した投光モジュールの生産設備(出所:オムロン)
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