記者は今、「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」をオフィスワークに適用している企業の取材を進めている。

 RPAは、ソフトウエアのロボットに、パソコンを使って行う定型的な事務処理を肩代わりさせる技術だ。長時間残業の削減を目指す政府主導の「働き方改革」の動きもあいまって、長時間残業削減の具体策の1つとして、2016年以降、注目が集まっている。

 この技術を使うことで、「あるシステムのデータをみて別のシステムに転記といった作業を繰り返し行う」といったオフィスのルーチンワークを自動化。退屈でやりがいのない仕事からオフィスワーカーを解放できると期待されている。

 RPAを使うと、いったいどんなオフィスワークが効率化できるのか──。それを探るために現在、ロボットの現場適用を、既に進めている企業十数社に取材を敢行。その成果は、2017年3月末に発行される日経情報ストラテジー5月号などで紹介する予定だ。

 RPAを先進導入している企業を取材するなかで気づいたことがある。それは「ビジネス適用に向けて研究しているテーマには人工知能(AI)のほか、RPAがある」という企業が少なくなかったことだ。コンタクトセンターなどのBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を手掛けるTMJや、ソフトバンクなどで、担当者がそう明かしていた。

 その理由はなぜか。ソフトバンクの松井孝之法人事業戦略本部新規事業推進統括部Watsonビジネス推進部担当部長は「AIは、情報を認識して判断するのが得意だが、その判断を踏まえて実行に移す部分は不得手だ。一方のRPAは、パソコンなどを使った処理を実行できる。そこでRPAをAIと組み合わせることで、自動化できるオフィスワークの幅が広げられる」と見通す。この答えで記者の疑問は晴れた。

「AIが不得手な部分はRPAでカバーできる」と説明するソフトバンクの松井孝之法人事業戦略本部新規事業推進統括部Watsonビジネス推進部担当部長
「AIが不得手な部分はRPAでカバーできる」と説明するソフトバンクの松井孝之法人事業戦略本部新規事業推進統括部Watsonビジネス推進部担当部長
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