2月16日に政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)が開催したマイナンバー等分科会で、現通常国会に提出するマイナンバー法などの改正案の概要が示された。

 マイナンバーの利用範囲の拡大では、大きく3分野が挙げられた(関連記事)。そのうちの一つが、銀行などの預貯金情報へのマイナンバーの付番である。1月14日に閣議決定された政府税制改正大綱にも明記されていた事項だ。

 具体的には、預金保険機構をマイナンバー法の「個人番号利用事務実施者」に位置付けて、ペイオフのための預貯金額の合算にマイナンバーを使えるようにする。併せて、国税通則法の改正によって、金融機関に対し預貯金情報をマイナンバーで検索できる状態で管理することを義務付け、自治体や年金事務所が社会保障制度の資力調査に利用できるようにする。マイナンバーを利用して効率的に資力調査を実施できれば、十分な貯蓄があるにもかかわらず低所得者として各種給付を受けようとするケースを排除しやすくなる。

 銀行は預金者にマイナンバーの告知を求めることになるが、預金者には告知の義務は課されない。このため、マイナンバーに基づく資力調査が実質的な効果を発揮できるようになるまでには、かなりの時間がかかるだろう。ただし政府は、付番開始後3年をめどに、必要に応じて付番促進のための所要の措置を講じることを附則に盛り込むことを検討している。改正法の施行時期は2018年をめどとしており、まずは新規開設口座への付番を推進することになりそうだ。

 マイナンバー制度の施行は、今年10月の住民へのマイナンバー(個人番号)の付番・通知の開始からだが、制度施行を前に利用分野の拡大の取り組みが具体的に進み出したことになる。

 行政サービスの高度化や行政事務の効率化に威力を発揮する、マイナンバー制度の適用分野が広がっていくのは望ましいことである。だが筆者は、今回の改正法案に含まれている事項よりも緊急の検討分野があると考えている。税率10%への消費増税に合わせた「給付付き税額控除」の導入検討である。