「真田丸ロス」「逃げ恥ロス」といった具合に、人気ドラマが完結した後に抱く喪失感について「○○ロス」と呼ばれることが増えた。2017年2月に入り、筆者もこのロスを味わった。対象は、本来は子供向けの戦隊ヒーローものドラマである。幼稚園児の息子に付き合って視聴し始めたはずが、1年経過した終盤には息子以上に熱心に見入っていた。

 年甲斐もなくロスを感じるまで熱心に視聴したことに、もっともらしい理由を付けるなら二つある。一つは、ストーリー構成の巧みさだ。序盤から縦横に張り巡らされた伏線が、終盤に次々と回収されていった。しかもそれらの大半が、1年間の放映期間を貫くテーマである「つながり」を強めるものになっていたことに、「練り込んでいるな」と感心させられた。

 もう一つの理由は、IT現場のシステム構築プロジェクトにおいて重要性を増す、「ステークホルダーマネジメント」に応用できる要素がいくつもあると思っていたからだ。

 ステークホルダーマネジメントとは、プロジェクトのさまざまな関係者や組織を洗い出し、影響を分析して、良好な関係を築き上げる取り組みを指す。プロジェクトマネジメントの知識体系「PMBOK(Project Management Body Of Knowledge)」の知識エリアの一つに位置付けられている。

プロジェクト関係者同士に「つながり」をつくる

 ステークホルダーマネジメントに応用できるドラマの要素の一例は、ぶれない信頼感を関係者の間で醸成するには、互いの思いや考えを理解し、強い「つながり」を作る必要があるというポイントを、リアリティーを持って描いていたことだ。

 ドラマでは、主人公と、訳あって故郷に戻る手段を失った異世界の仲間たちが成り行きでチームを組む。それなりに一体感を持って戦っているように見えたが、本格的な危機が訪れると亀裂が走る。

 原因は、主人公と仲間たちの間で、それぞれが持つ思いを表面的にしか理解していなかったから。仲間の一人の言葉を通じて気付いた主人公は、「俺は何も分かっていなかった」と反省し、改めて仲間たちの思いを受け止め直す。他方、対立した仲間たちもまもなく主人公が抱く強い思いを知ることになり、全員の間に強い「つながり」ができて一丸となる、という流れだ。

 IT現場に目を転じると、ドラマと似たような状況をしばしば見かける。システム構築プロジェクトで、本来は同志のはずである関係者同士が対立するケースが少なくない。

 原因の大半は、ドラマと同様に関係者の間で思いや関心にずれがあり、それを互いに共有できていないことにある。これを解決するには、対立する関係者の思いをしっかり理解して受け止め、その上でプロジェクトの成功に貢献する「つながり」を相手に用意することが欠かせない。