最近、「ネット情報収集ツールをクラウドソーシングのサイト経由で外注してプログラマーに作ってもらっているところなんだ」という話を、個人事業主である知人から個人的に聞く機会があった。国内外の商品の価格情報を収集して分析すると、ビジネスに役立つ知見を得られるのだという。

 ところで、その知人は、プログラミングをしたことはない。非IT系の仕事が本業なので、「RFP(提案依頼書)作成」「要件定義」がどのような意味の言葉なのかも知らない。

 そう聞けば、当然、今ITproをお読みいただいている方は、様々なトラブルの種を想像することと思う。記者もそう思って、さりげなく聞いてみると、やはり多少の不安を抱えているようだった。「やり取りが難しくてちょっと悩んでいるよ。仕様について電話で話したいと思っても、プログラマーさんがなんだか対応してくれないんだよね。腕は良さそうな人だから信じたいんだけれど」――。

 その会話がきっかけで記者は、クラウドソーシングという分野でシステム開発が順調に伸びているのかどうか、実態はどのようになっているのかちょっと調べてみた。ただし、この分野は定量的な実績に関する発表資料が乏しい。今回、大手サイトとされるランサーズとクラウドワークスに問い合わせてみたが、それぞれ「この1年間で当サイト上の依頼総額が300億円ほど伸びており、システム関連(ホームページ制作を含む)の占める割合は3割程度」(ランサーズ)、「システム開発案件の掲載数は月におよそ2000件。案件の単価の中心は30万~40万円。時給制でエンジニアに依頼している案件も月に数百件ある」(クラウドワークス)という程度であった。

 矢野経済研究所の2014年7月の調査発表によれば、2015年度の仕事依頼金額は650億円と予測されており、2012年度から2018年度までの平均成長率が60.5%だという。ランサーズの「システム関連の割合は3割程度」という見解を援用すると、うち3割に相当する200億円弱がクラウドソーシングによるシステム開発の依頼金額という勘定になる。

 こうして見ると、市場規模はまださほど大きいとはいえない。しかし年率6割という成長率は大きい。それほどの勢いで「発注者とエンジニアの双方、スムーズに取引が進むようになっているのか」という点が気になってくる。そこで、クラウドソーシングを利用したシステム開発の実態についてさらに大手2社に聞いてみたところ、中小企業や個人事業主からシステム開発上の悩みごととしてよく挙がるのは以下の3点だということが分かった。

・どうシステム仕様を説明文に書き表せばよいか
・どうエンジニアを選定するべきか
・発注後はどう進捗を管理するべきか