「クラウドのことはよく分かっていないんですよ。まだ理解がもやっとしていて・・・」。パブリッククラウドサービスを使ったシステム構築の経験がないシステムエンジニア(SE)から、こんな言葉を聞くことがある。クラウドを勉強しても、つかみどころがないのだという。

 その多くは、記者が長く付き合いのある、企業情報システムの開発や運用を担当するSEだ。勉強している人は、クラウドを自分の言葉で説明できる。「インターネットなどのネットワーク越しに、大量にプールされた共有のコンピュータリソースを必要に応じて素早く使う仕組みで、運用自動化や従量課金といった特性もある」といった具合だ。新しいクラウドサービスについても、クラウド事業者や他の開発者のブログを読んでいて、めっぽう詳しいケースがある。

 そんなSEでも、「クラウドはややこしい」という。

 クラウドへの抵抗感にもつながっているようなので、原因を考えてみた。思い当たったのは、クラウドそのものよりも、それと密接に関係して起きている別のイノベーションが分かりにくいのではないか、という仮説だ。

 そのイノベーションとは、システム開発・運用のプロセスやアーキテクチャー設計に関するもの。象徴するキーワードが、「DevOps」や「マイクロサービス」だ。

 それらの考え方を簡単にいうと、DevOpsは開発担当と運用担当の連携をツール活用や組織改革によって円滑化して保守開発を効率的に行うこと。マイクロサービスは、検索・顧客管理・決済といった比較的小さい単位(粒度)で、メッセージ連携のインタフェースを持つサービス化したソフトウエアを作り、その組み合わせでシステムを構築することを意味する。

 どちらも、考え方、具体的な手法、ツール、組織体制を含む広い概念であり、しかも発展途上。はっきり言って分かりにくい。マイクロサービスについては、あるITアーキテクトの言葉を借りると、「米国西海岸で実践が始まった、開発・運用のいろんな新しい考え方や方法をミックスしたもの」である。