ITプロジェクトでは発注者であるユーザー側のプロジェクトマネジャー(PM)と、受託者であるベンダー側のPMの間で、しばしば対立が生じる。本来は協力すべき関係だが、いざ問題が起こると責任のなすり付けになりがちだ。

 そんなトラブルプロジェクトで「お見事!」と思わず口にした火消し術を紹介しよう。

「お前らが全部悪いんだ」

 流通業での基幹システム刷新プロジェクト。規模は10億円前後と小さくない。リリースまであと数カ月のところで、いくつもの仕様漏れが判明した。課題一覧の案件も200以上あった。

 「お前らが全部悪いんだ」。怒り心頭のユーザーPMは、ベンダーPMをこう強く非難した。完全に「ユーザー vs ベンダー」の構図である。

 もちろんベンダー側の要件定義漏れや、課題解決の遅れの影響が大きい。だが、怒り心頭のユーザーPMの仕切りの悪さで、利用部門の協力をほとんど得られなかったのも事実だった。

 実際に固まったはずの仕様は何度も覆されていた。ベンダーPMのAさんも、ユーザーPMに対して穏やかな気持ちではなかった。

 それでもAさんはプロジェクトを投げ出すわけにはいかない。かと言ってプロジェクトオーナーにユーザーPMの交代を申し出れば、それこそ対立が一層深まる。「ユーザー vs ベンダー」の構図から脱却することが、Aさんの使命だった。