人手不足が深刻になっている。独立行政法人の労働政策研究・研修機構(JILPT)が2016年12月27日に公開した「人材(人手)不足の現状等に関する調査」によると、人手不足を感じている企業は43.1%と4割を超えていることが分かった。

 同調査は2015年12月時点の状況を尋ねたものなので、現時点ではさらに多くの企業が人手不足を感じているはずだ。厚生労働省が実施している「労働経済動向調査」の推移をみると、1年前の2015年11月時点で33ポイントだった正社員の過不足判断D.I.が、2016年11月1日時点で36ポイントに上昇している(図1)。パートタイムも同じ傾向だ。

図1●雇用形態別労働者過不足判断D.I.の推移(調査産業計)
図1●雇用形態別労働者過不足判断D.I.の推移(調査産業計)
出所:厚生労働省が2016年12月13日に公開した「労働経済動向調査(平成28年11月)の概況」
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 人手不足の根本的な原因が、労働人口の減少と少子高齢化という構造的な問題にあることを考えれば、2017年は人手不足が一段と進む。現場で働く従業員の労働時間や業務量は増加するだろう。

 企業にとっては、良くないシナリオが思い浮かぶ。従業員のモチベーションが下がり、健康にも支障が出る。結果として、製品やサービスの品質は低下し、さらには現場での事故や不正行為を招き、企業の信頼性を大きく揺るがす事態に発展する――。

従業員1人当たりの生産性や付加価値を高める

 企業は、もはや「人手を増やせない」ことを前提として、会社としてどう成長させていくのかを考えていかなければならない。今いる従業員だけで、今以上の生産性や付加価値を引き出すための施策を練る必要がある。

 一足早く手を打った企業がある。エフピコ物流だ。食品容器トレー最大手であるエフピコの100%子会社で、物流業務を担っている。同社が打ち出した施策は、2014年11月に導入した「音声ピッキングシステム」だ。従業員1人当たりの作業効率を、以前の2倍に高めた。経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「攻めのIT経営銘柄」にも選ばれている。