無限とも思えるコンピュータリソースを擁するパブリッククラウド。ところが、新年早々のユーザー企業への取材で「クラウドは性能不足」との声が相次いだ。いずれもオンプレミス(サーバー設置型)で利用する業務システムをクラウドに移行しようとして壁に突き当たった。

 「まさか、最初から最高性能のサービスを使うことになるとは思わなかった」。こう話すのは、社内システムのクラウド移行を積極的に進めるA社のIT担当者。サーバーをはじめハードウエアの調達や保守作業をオフロードする目的で、IaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)を活用する方針である。同社がつまずいたのが、販売管理や営業支援で活用するCRM(顧客関係管理)パッケージだ。

 検証目的でクラウド上で動かしてみたところ、オンプレミスよりも遅い。原因を調べると、CPUがボトルネックとなり、データベース(DB)で遅延が発生していた。IaaSでは、仮想マシンのCPU性能やメモリー容量が選べる。IT担当者は「パッケージベンダーの推奨値を算出したうえで、CPUやメモリーは余裕を持って割り当てたはずなのに」と首をかしげる(写真1)。

写真1●仮想マシン(インスタンス)の例。左が「Microsoft Azure」(出所:日本マイクロソフト)、右が「AWS(アマゾン ウェブ サービス)」(出所:アマゾン ウェブ サービス ジャパン)
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写真1●仮想マシン(インスタンス)の例。左が「Microsoft Azure」(出所:日本マイクロソフト)、右が「AWS(アマゾン ウェブ サービス)」(出所:アマゾン ウェブ サービス ジャパン)
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写真1●仮想マシン(インスタンス)の例。左が「Microsoft Azure」(出所:日本マイクロソフト)、右が「AWS(アマゾン ウェブ サービス)」(出所:アマゾン ウェブ サービス ジャパン)

 2カ月にわたるチューニング作業では、ディスク構成を見直したり、各種キャッシュの設定を変えたりと、手を尽くした。仮想マシンの性能も徐々に上げていき、気が付けば、メニューに並ぶ最高性能に達していた。何とか移行のメドは立ったものの、「一時はオンプレミスに残すことも考えた」という。

 ディスクI/Oの性能不足から、クラウド移行に二の足を踏む例もある。