ユーザー企業かSIベンダーかを問わず、「デジタルシフト」は2018年も多くの日本企業にとって重点テーマである。しかし、「AI(人工知能)」や「IoT(Internet of Things)」にチャレンジしてみたが、どうも成果はいまひとつ。「デジタル統括部」や「イノベーション推進室」といった組織を作ってみたものの、既に形骸化してしまった。デジタルシフトの号砲一発、いっせいに走り出した企業から、デジタル化の疲れを訴える声が少なからず聞こえてくる。

 疲労の色がより濃いのは、ユーザー企業のデジタルシフトを支援するSIベンダーだ。「IoTを取り入れたいというユーザーの要望で立ち上げたプロジェクトは数十を数える。しかし、PoC(概念検証)が終わると蜘蛛の子を散らすように誰もいなくなってしまう」。ある外資系ベンダーの担当者は肩を落とす。

 新たなサービスや儲かる仕組みを生み出そうというデジタル化では、コンセプト(概念)の有効性や技術的な実現可能性を確かめるPoCが欠かせない。「まだ見ぬ新サービスの効果を定量的に実証するのは難しいが、新たに顧客が付く、優良顧客が増える、ライバルが減るといったシナリオは検証できる」。NRIデジタルの雨宮正和社長は、PoCの効能を説明する。こうしたシナリオに基づき、ユーザーとSIベンダーが二人三脚で実効性を検証しながら進めなければ、デジタル化という名の宝探しは道に迷う。

 問題なのは、PoCの費用がSIベンダーの持ち出しになるケースが多いことだ。

 従来型のシステム構築と異なり、デジタル化では「RFP(提案依頼書)」すらない場合もある。ユーザーは手探りしながら最終形のサービスやシステムを作り上げたいと考えている。「機械学習がはじき出したマーケティング施策で売り上げが伸びるのか」「センサーから集めたデータを分析して機器の稼働率が上がるのか」といった定番のデジタル化でさえ、その効果はユーザーでまちまち。試行錯誤が必要なわけだ。