データのコピー・アンド・ペーストといったPCの繰り返し作業を、ソフトウエアロボット(ソフトロボ)を使って自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)。PCを使ったオフィスワークの負担を軽減する働き方改革の一策としてここ数年、注目が集まっている。

 記者は国内で注目され始めた2016年以降、RPAについて取材してきた。電通や三菱東京UFJ銀行、日本生命、オリックスグループといったRPAの先行導入企業や、ソフトロボの開発実行環境であるRPAツールのベンダー、RPAの導入支援を手掛けるコンサルティング会社など対象は多岐にわたる。

RPAの全社適用を進めている電通は、業務担当者向けにRPAのロボット開発講座を開き普及を進めている
RPAの全社適用を進めている電通は、業務担当者向けにRPAのロボット開発講座を開き普及を進めている
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 このなかで気づいたのが「RPAの開発や運用は、従来の業務システム開発といったSI(システムインテグレーション)と比べると大きく違う点がある」ということだ。そこで要件定義と開発、運用の3つで、大きな相違点を挙げてみたい。

とらえる要件が違う

 まずは要件定義だ。RPAでも業務システムと同じく、要件を固める必要がある。ただRPAの場合、自動化したいPCの操作を洗い出すことが要件定義の中心になる。「どんなデータをどう処理するか」「どんなユーザーインタフェースにするか」などの点を重視する業務システムの要件定義とはかなり違う。

 RPAツールは、業務部門のユーザーが実際にPCを操作することで、ソフトロボに代行させる作業を記録できる。しかし、操作させる作業が複雑な場合、RPAツールに不慣れな業務部門のユーザーでは作業をうまく記録できないことがある。そのケースでは、業務部門のユーザーが、手順を詳細に示した操作マニュアルを作り、その内容を要件定義書にして、ITエンジニアがRPAツールに反映させる開発体制を取ることがある。

 そういった複雑なPC操作をRPAで自動化したあるユーザー企業で、要件定義書を見せてもらった。その内容は特に印象に残っている。その企業では、Excelファイルを使ったPC作業を自動化していたが、その要件定義書を見ると、「Ctrl+A→Ctrl+C」「新しいファイルを開く」「Ctrl+V」「名前を付けて保存」といった文言が並んでいた。