政府は、2018年夏をめどに国家IT戦略を刷新する。現行のIT戦略である「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」は2017年5月に閣議決定されたもの。その原型となる最初の「世界最先端IT国家創造宣言」が策定されたのは、今から4年半前の2013年6月にさかのぼる。前年末に政権交代により第2次安倍政権が発足してから半年というタイミングであり、法律に基づいて内閣情報通信政策監(政府CIO)が正式に設置された直後でもあった。

 世界最先端IT国家創造宣言は、その後、政府CIOが室長を務める内閣官房IT総合戦略室を事務局として、毎年5~6月に改定を重ねてきた。4回目となる2017年5月の改定では、2016年12月に施行された官民データ活用推進基本法に基づく官民データ活用推進基本計画と一体で策定され、名称も両者を並記した形になっている。

 国家IT戦略を策定する高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)と、官民データ活用推進基本計画を策定する官民データ活用推進戦略会議は構成メンバーが共通で、ともに首相がトップを務める。両者の合同会議は2017年12月に「IT新戦略の策定に向けた基本方針」を決定。2018年夏のIT新戦略の策定に向け、「ITを活用した社会システムの抜本改革」を目標に掲げた。

 背景にあるのは、2001年1月の初の国家IT戦略「e-Japan戦略」の策定以来、20年近くも行政手続きの電子化に取り組んできたにもかかわらず、国民目線に立った行政サービスのデジタル改革がいまだに十分にできていないという“反省”である。基本方針の中で「これまでも、行政サービスのデジタル化に取り組んできたが、必ずしも国民の利便性向上や行政事務の効率化につながってこなかった」ことを潔く認めた。

 象徴的なのが、電子申請が可能であっても紙の書類の取得や添付を求める手続きが少なくないことだ。例えば、商業法人の登記はオンラインで申請できるようにしたものの、法人設立に必要なその後の行政手続きには紙の登記事項証明書の提出を求めるものが数多く残っている。

 政府は、世界銀行が公表する「ビジネス環境ランキング」で、OECD(経済協力開発機構)加盟35カ国中で3位以内に入ることを成長戦略の目標に据えている。ところが、目標とは裏腹に2013年の15位から2017年は26位へと順位を下げ続けている。「法人設立」に至っては、2016年の28位から、2017年には31位にまで落ち込んでしまった。登記の完了後に登記事項証明書などの書面の交付を受けたうえで、自治体の地方税事務所・労働基準監督署・年金事務所などに提出しなければならない届け出の煩雑さなどが足を引っ張っているためと、政府は分析している。