2017年度政府予算案が、16年12月22日に公表された。景気回復の遅れによる税収の伸び悩みや、高齢化に伴う社会保障費の膨張といった逆風の中で、経済の再生と財政の健全化の両立を目指す政府の難しいかじ取りが続く。

 予算案では、外国為替資金特別会計の運用益2.5兆円を歳入に全額繰り入れることで、なんとか国債発行額を前年度以下に抑え込んだものの、20年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する政府目標の達成はまったく見通せない状況だ。政府は1月20日召集予定の第193通常国会で予算案を早期に成立させて、“経済最優先”にまい進する意向である。

 電子行政に関わる分野の17年度政府予算案を見ると、16年度当初予算に比べて総じて増額基調ではあるものの、16年8月の概算要求時点の金額と比べると圧縮された項目が多い。厳しい財政事情を映した結果と言えそうだ。

 概算要求の金額と特に差異が目立つのが、情報セキュリティ対策である。例えば総務省では、政府情報システムのセキュリティ強化を狙った新規項目「災害や情報セキュリティに強い行政基盤の構築等経費」(27.4億円)がそっくり削られたほか、若手セキュリティエンジニア育成のための「ナショナルサイバートレーニングセンター(仮称)の構築」経費は概算要求での35.1億円から15.0億円へと半額以下に圧縮された。

 このほか、厚生労働省の情報セキュリティ対策経費(セキュリティ監査の実施、CSIRT支援事業者への委託など)も、30.0億円が6.2億円へと大幅に減額。内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の予算も、28.7億円から24.0億円へと16%減の小幅ながら切り詰められた。ほぼ“無傷”で済んだのは、防衛省のサイバー関連経費(1億円減の124億円)くらいである。

 もちろん、これら概算要求から金額が圧縮された項目でも、前年度比では大半が増額であり、中には2倍超に伸びているものもある。政府のセキュリティ対策予算が後退していると見るのは誤りである。ただ、予算編成の過程でセキュリティ対策分野が“削りしろ”として目を付けられやすい傾向は、民間企業と共通のようだ。