2017年のクラウド界隈最大の話題は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が1月にAmazon Web Services(AWS)を採用する方針を公表したことだった。セキュリティに厳しいメガバンクによる本格的なAWSの採用宣言は、国内企業のクラウド導入を後押しした。

 しかしながら2017年を振り返ると、銀行や同じくセキュリティに厳しい保険会社で目立ったのは、AWSよりも米マイクロソフトのクラウドサービスである「Microsoft Azure」の新規採用事例だ。

 セブン銀行では2017年9月に、AzureのPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)を中心としたサービス開発基盤を構築したことが判明。同基盤を使い、海外送金サービスのスマートフォンアプリや、リアルタイム振り込み機能の短期開発を実現している。

セブン銀行が開発した海外送金サービスのスマホアプリ。川崎市など同社と協定を結ぶ自治体による、国内居住外国人向けの情報配信機能も備える(画面右)
セブン銀行が開発した海外送金サービスのスマホアプリ。川崎市など同社と協定を結ぶ自治体による、国内居住外国人向けの情報配信機能も備える(画面右)
(出所:セブン銀行)
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 北國銀行も2017年6月、日本マイクロソフトの協力の下、Azureを基盤としたインターネットバンキングサービス「北國クラウドバンキング」の開発を始めたと発表。2018年夏のサービス開始を目指す。

 保険会社では大手の第一生命保険が2017年3月に、健康増進サービスのシステム基盤としてAzureを採用したと公表。第一弾として健康増進アプリの「健康第一」を提供開始した。健康増進サービスは、保険ビジネス(Insurance、インシュランス)とテクノロジー(Technology)の両面から、生命保険事業独自のイノベーションを創出する「InsTech(インステック)」という同社の取り組みの一翼を担う。

基本機能や認証取得はAWSと大差なし

 もっとも、国内の銀行や保険会社では、ソニー銀行やマネックス証券、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険などが数年前からAWSを採用しており、採用事例数で他のクラウドベンダーを先行していた。

 それが、MUFGのAWS採用宣言によってクラウド導入の機運が高まった2017年に、AWSよりもAzureの採用事例が目立ったのはなぜか。前提として、ネットワークやセキュリティの機能は、既にAWSと遜色ない水準に達している。具体的には閉域網接続サービスや、データセンター内に顧客専用の仮想プライベートネットワーク環境を作れる機能は、AWSに次いでAzureでも数年前に対応済みだ。