2015年の通信業界を大きく賑わせた、格安SIMや格安スマホ。今や大手量販店の店頭に大きなコーナーができるなど大ブレークし、携帯大手3社に次ぐ、第四の勢力になりつつある。

 格安SIM、格安スマホ市場の原動力となっているのが、MVNO(仮想移動体通信事業者)だ。MVNOとは、電波の割り当てを受けてサービスを提供するモバイル事業者から、無線ネットワークを借りて自社ブランドのモバイルサービスを提供する事業者のこと。既に敷設してある無線ネットワークを借りて事業に参入できるため、参入コストを大きく抑えられる。

 MVNOの仕組みを活用して、携帯大手3社以外の新規参入事業者が続々と登場。そんな新規参入事業者向けに、端末販社などを経由してSIMロックフリー端末を提供する国内外の様々な端末メーカーが現れ、これまでの携帯大手各社を頂点とするエコシステムとは、全く異なった市場が形成されつつある。

写真1●ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba店にできた「SIMフリーカウンター」
写真1●ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba店にできた「SIMフリーカウンター」
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写真2●ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba店で販売されるSIMカード
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 そんなMVNOだが実は歴史が古い。日本で本格的なMVNOが始まったのは、今から15年ほど前の2001年だ。筆者は日経コミュニケーション記者として、さらには2015年4月に創刊した通信専門ニューズレター「テレコムインサイド」の編集長として、10年以上にわたって、このMVNOの動きをウオッチしてきた。

 このような経験を生かして最近、「格安スマホの仕掛け人たち」という書籍を執筆・担当した。書籍では、格安スマホの誕生から現在のブレークに至るまで、市場の開拓に挑んだ数々の“仕掛け人たち”の苦闘を描いている。

 執筆を通じて特に興味深かったのが、MVNO最初期の知られざるエピソードだ。ここでは、MVNOの誕生秘話を紹介したい。