富士通の業績がいっこうに改善されない。2016年度まで10数年間の営業利益率は、最高は2007年度の3.8%、最低は2008年度の1.5%で、2~3%台にとどまったまま。売上高が5兆円をきった2008年度以降、4兆6000億円前後の飛行を続ける。

 なかなか浮上できない最大の理由は、2003年6月に社長に就任した黒川博昭氏時代から10年以上も続く構造改革に終止符を打てないことにある。

 問題は、事業の選択と集中など思い切った施策作りと計画の実行力。「ソフト・サービスに振りすぎた」「プロダクトを再生する」「デジタルサービスにシフトする」などと考えている間に、競合は変革を遂げ、新興企業が新市場を創出している。

 確かに田中達也社長は1年前の2015年、テクノロジーソリューション事業に経営資源を集中する方針を打ち出した。「つながるサービスにフォーカスしたビジネスモデルにする」とし、営業利益率10%超など、世界で戦えるICTサービス企業の体質にすると宣言した。

 だが、黒川社長時代からテクノロジーソリューションを中核事業に据えていたはず。「経営資源を集中している」と言っても、ハードやソフト、サービスを販売し、システム構築・運用を請け負う伝統的なビジネスに収益を求めているだけではないか。そう思ってしまう。

 ノンコア事業であるユビキタスソリューションとデバイスソリューションの変革も進んでいない。黒川社長の後を継いだ野副州旦社長に期待されたが、辞任に追い込まれた結果、今日までパソコン事業や携帯事業は温存したまま。2015年6月に社長に就いた田中氏は「独立ビジネスにする構造改革に取り組む」ことをようやく決断し、2016年2月に両事業を分社化した。

 だが、10月27日の経営方針説明会では「あらゆる選択肢を模索。シナジーのあるものはエグジットではなく、連携する」などと、最終形を決めかねている発言をする。