ITサービス市場の主役が、IT企業からユーザー企業に移り変わることを予感させる出来事があった。住宅設備大手のLIXILグループが14年9月、ITサービス事業に本格的に乗り出したことだ。

 工務店など地域密着の住宅建設会社に、木造住宅1棟の原価積算から見積書や工程表などの作成をクラウドサービスで提供するもの。9月の事業開始の記者会見で、LIXILの藤森義明社長兼CEOが「(サービス開発に)30数億円の投資をした」と語り、事業成功への強い意欲をみせた。

 ITサービス事業を展開するのは、東京・新宿に本社を置くIT子会社のK-engineだ。ウィルコム社長などを務めた喜久川政樹氏が社長に就いたほか、IT部門からも数多く配属する。工務店が必要なITシステムに関するニーズを調べるために、2011年に設立した前身会社の資本金を1億円から54億円に増資し、事業会社として新たにスタートさせたところ。増資は、政府系投資会社の産業革新機構に最大20億円の第三者割当をするほか、さらに2、3社から出資をうける計画。LIXILは株式の半分を持つ。

 喜久川社長によると、木造住宅建設の約6割を占める工務店など地域の住宅建設会社数が現在、約6万と最盛期から20~30%減少しているという。背景には、2006年に110万戸から120万戸あった木造住宅の新築が、リーマンショック以降、年80万戸の水準に落ち込んだことがある。市場規模の縮小は、住宅設備販売にも大きく影響するだけに、工務店の活性化はLIXILにとっても解決すべき優先課題の一つなのである。

 問題は、多くの工務店の営業利益率が2%にも満たないこと。「儲からない」経営状態から脱するうえで、住宅を購入する顧客や取引先とのやり取りをスピーディにすることが欠かせない。こうした顧客満足度を高めるために、同社はこれまでの紙ベースによるアナログ体質からIT活用への切り替えを提案する。具体的には、家1棟の原価積算から従来手作業で行っていた住宅購入者への見積もりや工程表の作成を自動化すること。「施主の理想するイメージの家がいくらで、工期が何カ月かかるのかを素早く提示する」(喜久川社長)。