NECがソフトウエアでネットワーク環境を定義するSDNに一段と力を入れ始めた。同社の北風二郎ソリューションプラットフォーム統括本部長代理は「SDNはトライアルから実用期に入った」と認識しており、少なくとも17年までにネットワーク市場の3割がSDN化し、世界の市場規模が17年に14年の9倍以上に拡大すると読む。今後3年から4年の間にネットワーク機器の入れ替えがあるので、17年以降さらなる普及を期待している。

 だが、その推進によって、ネットワークインテグレーションというビジネスを失い、ビジネスモデルの変革に迫られることになる。なので、競合ITベンダーの担当者は「どうして力を入れるのだろう」と、NECがユーザーにSDN導入を積極的に提案していることを不思議がっている。

 NECの福田公彦執行役員は「導入メリットは明らか」と、SDN事業強化の会見で説明する。すでに200以上の導入実績があり「ネットワークの専門家でなくても、運用や簡単な設計が実施可能になった」「従来、休日や夜間に実施していたネットワークメンテナンスを、無停止で日中でも実施できるようになった」「構成変更で生じる人的コストが、80%も削減できた」といったユーザーの声を紹介する。

 「従来のネットワーク・アーキテクチャが限界にきている」(北風統括本部長代理)ことも、SDN化を加速させる要因にあるという。では、その限界とは何か。「ルーターやスイッチなどネットワーク機器一つひとつに、『次はあっちに進みなさい』という行き先表示を人手で書き込んでいたら、環境変化に対応して瞬時に切り替えることができない」(同)。そこに、自動で変更できるSDNが求められる理由があるという。

 半面、SDN化はこうしたネットワーク機器の設定といったネットワークインテグレーションの売り上げを小さくさせる。この作業は、ネットワーク構築費の約2割を占めている。加えて、構築の6割から7割かかっていたネットワーク機器のコモディティ化で、本体の低価格化も加速する。ここも儲からなくなる。「付加価値のないものはなくなる。利益率が下がり、儲からなくなる」(北風統括本部長代理)。