「2018年度の売上高3兆円、営業利益1500億円、当期純利益850億円は、最低限の目標」。NECの社長に4月1日に就任した新野隆氏は4月下旬の2015年度決算説明会で、2016年4月にスタートした中期経営計画の意気込みを語った。売り上げ3兆円を割った同社は、どこに成長への活路を見出そうとしているのだろう。

 新野社長は「2012年度から、1000億円台の営業利益を確保できる体質になった」とする。だが、目標の1500億円超を達成したのは、2000年度と2007年度の2回だけ。前任の遠藤信博社長(現会長)が作成した中計の目標数値も、最終年度の15年度に売上高3兆2000億円、営業利益1500億円だったが、結果は売上高で4000億円弱、営業利益で500億円弱、それぞれ足りなかった。SDNをはじめとするテレコムキャリア向け製品と、蓄電池などスマートエネルギー関連商品が、想定を大きく下回ったことによる。2015年度にエネルギーで約140億円、SIプロジェクトで約130億円の損失も発生した。

 新野社長は目標未達の理由を2つ挙げる。新規事業の立ち上げが遅れたことと、アジアなどグローバル市場の開拓が期待した以上に進まなかったことだ。背景には、実行計画への落とし込みと実行力不足がある。経営リソースが不足しているのに大きな目標を掲げるなど、激しい変化への迅速な対応が不十分だったという。

 それ以上に重要なのは、経営者と社員がコミュニケーションを交わすことだろう。今日の状況に対する危機意識が薄れて、言われたことだけ対応する社員が増え、新しいことに挑戦する意欲を失えば、変革の激しいIT産業で勝ち抜くのは難しくなる。「実行力不足は経営の問題」という筆者の質問に、新野社長は「それは数年前の課題」と語り、経営レベルと現場レベルの実行力を高めてきたと反論する。

 しかも、前中計で打ち出した社会インフラを提供する社会ソリューション事業に注力した方針について、新野社長は「間違っていなかった」と言う。とはいっても、社会ソリューションの領域はあまりにも広い。そこで新中計では、サイバーセキュリティなどのセーフティとグローバルキャリア向けネットワーク、オムニチャネルなどリテール向けITサービスの3つのグローバル化に経営資源を振り向けて、3事業の売り上げを2000億円以上増やす作戦を立てる。