企業ネットワークの歴史は、技術革新と新しい回線サービスによるコスト削減と速度向上の歴史だったと言える。東海道新幹線は速度が上がる度に料金が高くなったが、ネットワークは1990年代と比較してスピードが2桁速くなって料金は逆に1桁安くなった。独占市場と競争市場の違いが鮮やかに表れている。

 ネットワークの低価格化はすさまじく、もはやコスト削減の余地はないとみている企業は多い。しかし今こそさらなる費用削減のチャンスなのだ。

コスト削減の源泉

 コスト削減の源泉は2つある。モバイルシフトと固定回線の見直しだ。モバイルシフトとは固定回線に対して相対的に安価になったLTEなどのモバイル回線をメイン回線として使うことだ。既にパソコンの3分の2以上を常時モバイルで使用するといった事例がある。社員の一部が外出先からリモートアクセスのためにモバイルを使うのではなく、社内・社外を問わず常にモバイルを使う。

 固定回線の見直しで効果が出るのは「もうコスト削減の余地はない」という先入観からか、10年近くそのままという企業が多いからだ。確かに2009年7月にKDDIがWide Area Virtual Switchの提供を始めて以降、革新的と言えるサービスは登場していない。しかし、固定回線でも競争は続いており、相対契約で決まるIP-VPNや広域イーサネットの相場は安くなっている。

 どの程度コストを削減できるか、筆者は提案書に3つのグラフを並べて示す。左のグラフには現在のネットワークの月額費用とその内訳を示す。7割から8割を回線が占め、残りが保守や運用などの費用である。

 モバイルシフトや固定回線見直しでコスト削減を図り、その結果を2つ目の棒グラフとして示す。筆者のグラフの特徴はネットワークを更改するための設計・試験・構築の費用も月額化していることだ。3年から6年の期間で支払っていただくのである。これらの費用を加えても、20%から40%の費用を削減できるケースが多い。

 イニシャルコストゼロで毎月払っていた費用が安くなり、より広帯域でモバイルによる付加価値も出せるネットワークが手に入ることになる。