高校時代のクラス(愛媛県立西条高校 第5期理数科)で2年ほど前からメーリングリストが運用されている。思い出話や酒談義、季節の花の写真などがやり取りされて、なかなか楽しい。最近、メンバーの一人である猪川弘徳君が、伯父さんの書いた俳人種田山頭火についての文章を送ってくれた。興味深い内容なので後ほど紹介したい。

 さて、本論に入ろう。熊本地震の発生から3カ月たった。今も不自由な生活を余儀なくされている方々が1日も早く元の暮らしに戻られることを祈念します。

 熊本県には筆者が運用している複数の全国規模ネットワークの拠点がある。地震発生時のネットワークの不通は、地震の激しさの割には多くなかった。不通の原因は停電であり、回線の切断はなかった。拠点の多くは4月14日夜の前震の翌日も、16日未明の本震の後も通信が確保できていたのだ。

 しかし、拠点の通信が可能でも役に立たなかった。役に立ったのはセキュアモバイル網(インターネットに接続されていないモバイルパケット網)によるスマートフォン(スマホ)内線だ。以下はスマホ内線を導入している企業の熊本支社での実話である。

個人とつながることが大事

 オフィスでイントラネットの通信ができても地震発生直後には意味がなかった。なぜなら、自宅の被害が大きかったため、社員が出社できなかったからだ。16日土曜日の未明に発生した地震の翌営業日は18日月曜日だが、社員は誰も出勤できなかった。出社し始めたのは19日の午後だそうだ。

 本震発生から3日余り出社できず、オフィスのイントラネットは役に立たなかったが、社員全員に配布しているスマホはモバイルパケット網で内線電話が使えたし、社内メールも利用できた。安否確認や本社などとの業務連絡ができたのである。災害発生時にはオフィスまでの通信を確保できることよりも、個人がつながって通信できることが重要なのだ。「スマホ+セキュアモバイル網」はそのための強力なツールになる。

 図1がこの企業のネットワーク構成である。東京に本社、全国に10数カ所の支社がある。内線電話端末の8割がスマホだ。スマホには内線通話用の通話アプリが搭載されており、社内・社外にかかわらず、常にセキュアモバイル網のパケット通信で、内線電話の発着信ができる。ゼロ発信すると、データセンターの電話回線を介して外部の固定電話や携帯電話にかけることもできる。この際、相手にはスマホと1対1で対応した050電話番号が発信元番号として通知される。相手からスマホに着信履歴でコールバックすると、該当するスマホに着信する。

図1●熊本地震直後も通話が確保できたスマホ内線(Mモデル)
図1●熊本地震直後も通話が確保できたスマホ内線(Mモデル)
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 熊本支社では地震の直後でも、熊本にいる社員のスマホから他の社員のスマホ、あるいはスマホから本社の固定電話への通話が可能であった。社員の多くがシンクライアントで利用するタブレットPCを持っており、これもスマホのテザリングで利用できた。メールや社内のWeb閲覧が使えたのである。