2017年の企業ネットワークのトレンドを図1に示す。キーワードは「モバイルシフト」と「クラウドシフト」である。モバイルシフトとは光ファイバーを使った固定通信中心のネットワークからモバイル主体のネットワークへ移行することだ。かつてモバイルは営業担当者などが社外からイントラネットを使うための「リモートアクセス」の手段だった。

図1●2017年の企業ネットワークは「モバイルシフト」と「クラウドシフト」
図1●2017年の企業ネットワークは「モバイルシフト」と「クラウドシフト」
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 しかし、格安SIMでコストが大幅に下がった結果、モバイルは企業のパソコンやIoT機器の過半を収容するメイン網として使うべきものとなった。モバイル中心のイントラネットなので「モバイルイントラネット」と呼べるだろう。筆者が手掛けたモバイルイントラネットでは社員のパソコンの約8割が常時モバイルで使われている例がある。オフィスには広域イーサネットを引いているが、固定回線や有線LAN・無線LANはあくまでモバイルを補完するためである。

 モバイルイントラネットには経済性向上、利便性向上、安全性向上の3つのメリットがある。固定回線に対して相対的に安価になったモバイル回線を多用することで回線費用が削減できる。有線部分が少なくなるのでルーターやスイッチの台数が削減でき、配線コストも下がる。スマホ内線を併用すると固定電話機や電話配線も不要になる。

 モバイルを生かしたワークスタイル変革やスマホ/タブレット端末を使った情報共有・コミュニケーションの活性化も可能だ。モバイルはパケット通信を使うので地震などの災害時も通信規制をほとんど受けない。スマホ内線やメールなどの通信手段を確保できる。

 企業はコンシューマー向けのインターネット接続を目的としたモバイル網ではなく、インターネットと接続せずスマートフォンやパソコンをイントラネットに直接収容できる「閉域モバイル網」を使うべきである。