この連載では、「仕事を成功させるための思考術」を扱っている。前回は「情報が不足し鮮度も悪い仕事」をテーマに、「情報とは何か」「どのような種類があるのか」を手始めに、情報が不足すると他人の説得に失敗する事例などを説明した。「失敗をもたらす10のダメ仕事」は次の通りである。

失敗をもたらす10のダメ仕事

    (1)目的が曖昧で作業手順がいい加減な仕事
    (2)情報が不足し鮮度も悪い仕事
    (3)他人を蔑ろにする仕事
    (4)素人の浅知恵で判断する仕事
    (5)発想が貧困でつまらない仕事
    (6)自分の考えに酔いしれる仕事
    (7)社内調整が甘い仕事
    (8)資料が非論理的で分からない仕事
    (9)説明の辻褄があってない仕事
    (10)思想も志も見えてこない仕事

資材としての「情報」をどう使うか

 前回(仕事を成功させる思考術(5)「情報が足りない仕事」はダメである)の事例では、Web販売システム開発の要件定義を商品開発部門に依頼しようとした西野氏が、ダイレクト販売商品課、五味課長の説得に失敗している。なぜ西野氏は失敗したのか。これは間違いなく、西野氏の準備不足が原因である。

 西野氏は、五味課長の反論をすべて事前に予想して、返し話法(相手方の反論に対する反論話法のこと)を考えておくべきだったのだ。彼が今回の事例で情報収集すべきだったことは、

  • 先方(五味課長)が、自分の課は忙しいと考えていること。
  • あまり要件定義を自分たちの組織でやりたがっていないこと。
  • 要件定義という作業をあまり知らないこと。
  • 要件定義はシステムがやってもよいと思っていること。

 などだ。このようなことを事前に電話や会話などで情報収集しておかず、場当たり的に説得しても相手を納得させる言い方ができるわけがない。「情報」があれば、相手が何を気にしているのか、何を嫌がっているのか、何が欲しいのかが予測できる。だから情報が必要なのだ。