この連載では「仕事を成功させるための思考術」を扱っている。前回はこれまでの内容のまとめとして安浦氏と稲田氏の事例を説明した。「失敗をもたらす10のダメ仕事」は次の通りである。

失敗をもたらす10のダメ仕事

    (1)目的が曖昧で作業手順がいい加減な仕事
    (2)情報が不足し鮮度も悪い仕事
    (3)他人をないがしろにする仕事
    (4)素人の浅知恵で判断する仕事
    (5)発想が貧困でつまらない仕事
    (6)自分の考えに酔いしれる仕事
    (7)社内調整が甘い仕事
    (8)資料が非論理的で分からない仕事
    (9)説明のつじつまが合っていない仕事
    (10)思想も志も見えてこない仕事

 14か月に渡ったこの連載も30回目の今回が最終回である。当連載では、実務で発生する日常的な仕事の失敗が、思考の不足、他人への配慮不足、表現の不足など「10のダメ仕事」から発生することを説明してきた。

 これらの10のダメ仕事の特徴やその対処策を、事例を使って説明した。これらの事例は筆者が自ら経験したことに加え、先輩、メンター、コンサルタントなどから収集したもので、基本的には実際にあったことをベースに書いている。

 記事には多くの読者の方から感想をいただいたのが、その中で質問されたことの一つに「事例は現実ですか、創作ですか」というものがあった。

 「現実が基本だが、時に複数の現実を組み合わせて使うこともある」というのが回答である。完全な現実では登場する会社、組織、人物が読み手に推測される可能性があるため、それを避けることが必要と考えたためである。

 また、「10のダメ仕事のうち、どれが一番ダメでしょうか」という質問もあった。これには「(1)目的と手段がダメな仕事、(2)情報収集がダメな仕事、(10)思想と志がダメな仕事」の三つと回答した。

 (1)から(10)は全て仕事を失敗させるダメ仕事であるが、(1)目的と手段、(2)情報、(10)思想と志は仕事のベースになる重要な事項であるというのがその理由である。この3つができないと、ほとんどの仕事(作業的な仕事は除く)は失敗すると考えるからだ。

 では、これに関する本連載最後の事例を紹介しよう。