この連載では、「仕事を成功させるための思考術」を扱っている。前回は、目的と手段の事例について、B社の上野氏と浮島氏の話を紹介した。「失敗をもたらす10のダメ仕事」は次の通りである。
(1)目的が曖昧で作業手順がいい加減な仕事
(2)情報が不足し鮮度も悪い仕事
(3)他人を蔑ろにする仕事
(4)素人の浅知恵で判断する仕事
(5)発想が貧困でつまらない仕事
(6)自分の考えに酔いしれる仕事
(7)社内調整が甘い仕事
(8)資料が非論理的で分からない仕事
(9)説明の辻褄があってない仕事
(10)思想も志も見えてこない仕事
前々回は「目的と手段の逆転現象」について説明。前回は、逆転現象に関する事例を取り上げた。今回は前回の事例の続きとして「なぜ、手段と目的の逆転が起こるのか」と「どうすれば目的と手段の逆転を防げるか」を説明したい。
なぜ「手段と目的の逆転」が起こるのか
「手段の目的化」は誰でもやってしまう可能性がある。では、なぜやってしまうのか。それには「同じ目的に向かって仕事をしていても、実際の目的は人や組織のミッションに従ってしまう」という組織構造的な理由が関係している。では、事例の続きとしてこれらを説明する。
前回までのあらすじ
- ソフト開発会社B社はA社の子会社である。B社に勤務する上野氏はプロパー社員。システム開発部門で、設計チームのリーダーとなっている。
- 上司の山元課長は厳しく、部下に自分で考えて仕事を組み立てることを求める人だった。あるとき、課長は部下である上野氏と秋山氏に「課内の教育をどうすればよいか考えよ」という仕事を与えた。
- 上野氏を嫌う秋山氏は、今回の仕事で上野氏を追い落とそうと狙っていた。絶対に失敗できない状態であった。
- 考えれば考えるほどよいアイデアが浮かばない上野氏は、仕事がまったく面白くなくなった。悪循環で、ますますよい考えが浮かばなくなった。
- あるとき、上野氏は組織から距離を置いている浮島課長補佐と話をすることになった。浮島補佐は、上野氏に「仕事がつまらないのなら、成長はできない」と言った。彼は上野氏が尊敬する人物と、深い関係を持っていたのだった。
- 浮島氏は上野氏に「今のままでいいのか」と問い、回答を迫った。
混乱する上野氏、答えを迫る浮島氏、この二人に、その後どのようなことがあったのかを紹介したい。