この連載では「仕事を成功させるための思考術」を扱っている。前回はこれまでの内容のまとめとして落合氏と高田氏の事例を説明した。「失敗をもたらす10のダメ仕事」は次の通りである。

失敗をもたらす10のダメ仕事

    (1)目的が曖昧で作業手順がいい加減な仕事
    (2)情報が不足し鮮度も悪い仕事
    (3)他人をないがしろにする仕事
    (4)素人の浅知恵で判断する仕事
    (5)発想が貧困でつまらない仕事
    (6)自分の考えに酔いしれる仕事
    (7)社内調整が甘い仕事
    (8)資料が非論理的で分からない仕事
    (9)説明のつじつまが合っていない仕事
    (10)思想も志も見えてこない仕事

 前回の事例では、落合課長が高田氏に「ダメなところ」を自覚させ、それを徹底的に排除することで成長させようとする状況を紹介した。落合課長の指導法は明確である。すなわち、ダメ部分がなくなれば良い部分が増える(ダメの反対=良い)という理屈である。

 筆者はこれまで主張してきた通り、ダメ特性(ネガティブと特性)を除去すれば、良い特性(ポジティブ特性)が残り、仕事能力が向上すると考えている。これを「ネガティブ特性除去法=ダメ除去法」と名付けて、現場での指導に用い、雑誌や書籍でも紹介している。

 この方法で大事なことは、「ダメ部分を自覚すること、させること」である。なぜなら、ダメ部分(解決すべき課題)が分からなければ改善対策が分からないからだ。そこで、この方法では最初に人の能力を「良いところとダメなところ」分けることが必要になる。

 本来、人には誰でも「良いところ」と「ダメなところ」がある。会社に入ったばかりの新人はダメ部分が多いだろうが、良いところもある。新しいことに興味を持ち、一生懸命覚えようとする気持ち。これがあれば、それだけでとても良いと思う。

 一方、会社における役職者はどうか。係長、課長、部長といった役職者は、良いところが多いからこそ高い評価をもらい、高いポジションを得たはずだ。しかし、100%全て良いところばかりではない。ダメなところもあるだろう。

 たとえば、若い頃から大きなリスクをとらないで成功してきた人(=失敗しないようにリスクを避けて偉くなった人)は、上になってもリスクをとりたがらない。それが、ダメなところになることも多い。この種の話は、飲み屋でもよく聞く話である。

 新人でも2年目社員でも課長でも、人には良い部分とダメ部分が両方ある。ただし、人の能力習得(成長)によって、良い部分とダメな部分の比率は変化する。仕事の経過年数にしたがって、良い部分が多くなりダメ部分が少なくなっていくのだ。