筆者は、ある企業に勤務している、IT企画の仕事を行う管理職である。これまで25年に渡ってさまざまな仕事を上司、同僚、部下と一緒に行ってきたが、その中でいろいろな人の指導を受けて成長することができた。そして、他の社員の成長もサポートできたと思っている。

 筆者は、ある仕事をきっかけに「業務上体系化されていないスキル(=ソフトスキル)が仕事の成否に大きな影響を与える」という仮説を持つことになった。それは、筆者に強い学習動機をもたらした。当時もIT(インフォメーションテクノロジー=情報技術)を使った仕事をしていたが、そんな技術中心の仕事であってもテクニカルスキルを代表とした「ハードスキル」でなく「ソフトスキル」が仕事の成功に大きく影響する、という考えを持つに至ったのだ。

 ソフトスキルとは、いわゆる「仕事のやり方」を構成する技能セットである。たとえば、対人能力、思考力、社内調整力といったもので、これらは広義では「段取り」「仕事の進め方」などと呼ばれる。昔は、体系的に教えたり、教わったりするものではなかったと思う。

 今では、これらのスキルはメディアでも取り上げられることが多くなり、ビジネスパーソンがその内容を具体的に意識できるようになった。だが、筆者が中堅のビジネスパーソンだった頃には、「ソフトスキル」という概念は今ほど浸透しておらず、その内容は体系化されていなかった。

12年前に「壁」にぶち当たる

 今から12年前、筆者の属するチームは、あるシステム統合の仕事を担当していた。そこでは、これまで経験したことがない多くの新しい事柄があり、筆者は仕事が進まない、問題が解決できないという状況に直面した。それまで経験したことがない課題にぶつかった。蓄積したITの専門知識だけでは、前に進まなかった。十分なテクニカルスキルを武器として持っていたにも関わらず、その武器だけでは太刀打ちできない状況に陥ったのだ。