この連載では、「仕事を成功させるための思考術」を扱っている。前回までは「説明」をテーマに「人のメディア力」を高める方法を解説した。「失敗をもたらす10のダメ仕事」は次の通りである。

失敗をもたらす10のダメ仕事

    (1)目的が曖昧で作業手順がいい加減な仕事
    (2)情報が不足し鮮度も悪い仕事
    (3)他人をないがしろにする仕事
    (4)素人の浅知恵で判断する仕事
    (5)発想が貧困でつまらない仕事
    (6)自分の考えに酔いしれる仕事
    (7)社内調整が甘い仕事
    (8)資料が非論理的で分からない仕事
    (9)説明のつじつまが合っていない仕事
    (10)思想も志も見えてこない仕事

 今回から、この連載の最後のテーマとなる「思想も志も見えてこない仕事」をテーマにする。

「思想も志も見えてこない仕事」はなぜダメか

 筆者が考える「仕事の成否の分かれ目を表現する格言」の一つに、以下のものがある。

仕事を成功させる人は、「思想や志が伝わって来る」が失敗させる人は、「思想も志も見えてこない」

 ここで言う「思想」とは、仕事で必要となる要素(仕事の目的・手段・スケジュール・マネジメントなど)が目的に適い、一貫性を持つようにするためにベースとなる「考え・コンセプト・主義」のようなものを意味している。

 また「志」とは、「仕事の完成をコミットする強い気持ち」を意味している。つまり、「思想と志が伝わる」とは、「仕事の成功につながる「考え・コンセプト・主義」がしっかりしており、それらの実行がコミットできている」と思える状態である。

 「思想も志も見えてこない」はその逆である。「仕事に対する考えに一貫性がなく、実行もできなさそう」と思える状態である。一般に仕事においては他人との協業が必要になるので、「他人に自分が必ず実行できる」と思わせることは重要である。

 なぜなら、他人は「成功しそうな人と失敗しそうな人がいれば、多くは成功しそうな人に協力したいと思う」からである。誰でも「失敗しそうな人」に協力はしたくないだろう。これが、「思想も志も見えてこない」仕事がダメな理由である。