この連載では、「仕事を成功させるための思考術」を扱っている。前回まで5回にわたって、「資料」をテーマにB社の浮島氏と上野氏、彼らのメンターである東氏のケースで説明した。「失敗をもたらす10のダメ仕事」は次の通りである。
(1)目的が曖昧で作業手順がいい加減な仕事
(2)情報が不足し鮮度も悪い仕事
(3)他人をないがしろにする仕事
(4)素人の浅知恵で判断する仕事
(5)発想が貧困でつまらない仕事
(6)自分の考えに酔いしれる仕事
(7)社内調整が甘い仕事
(8)資料が非論理的で分からない仕事
(9)説明の辻つまが合っていない仕事
(10)思想も志も見えてこない仕事
前回は、東氏の問いに対して、必死に答えを探そうとする上野氏の状況を紹介した。東氏から渡された膨大な著作データの中から、浮島氏の過去に関するメモと「人のメディア力」に関する執筆を読んだ上野氏が、何かをつかんで会社に向かうところで終わっている。
今回から九つ目の「説明の辻褄があってない仕事」を説明する。上野氏は何をつかんだのか、浮島氏の問いとは何だったのか、二人はその後どうなったのか──。
「説明の辻つまが合っていない仕事」は何故ダメか
筆者が考える「仕事の成否の分かれ目を表現する格言」の一つに、以下のものがある。
失敗させる人は、「説明の辻つまが合っていない」
「説明が合理的である」とは、「あることを他人に伝えるための一連の行動」が「理に適っている」ことを意味している。一方「説明の辻つまが合っていない」とは、論理的整合性がなく理路整然としていない状況、話の筋道が一貫していない状況を指す。