この連載では、「仕事を成功させるための思考術」を扱っている。前回は「資料が非論理的で分からない仕事」の4回目として、メンターである東和彦氏の指導を受けて、上野主任が「クラウドコンピューティングが何故必要なのか」について根本検証した状況を紹介した。「失敗をもたらす10のダメ仕事」は次の通りである。

失敗をもたらす10のダメ仕事

    (1)目的が曖昧で作業手順がいい加減な仕事
    (2)情報が不足し鮮度も悪い仕事
    (3)他人を蔑ろにする仕事
    (4)素人の浅知恵で判断する仕事
    (5)発想が貧困でつまらない仕事
    (6)自分の考えに酔いしれる仕事
    (7)社内調整が甘い仕事
    (8)資料が非論理的で分からない仕事
    (9)説明の辻褄があってない仕事
    (10)思想も志も見えてこない仕事

 今回も引き続き「資料が非論理的で分からない仕事」の5回目として、上野主任と東氏の事例を使い、資料作成の考え方、具体的事例について説明したい。

浮島氏と上野氏の事例「これまでのあらすじ」
19回からの続き)
  • 上野主任は大手IT企業A社の開発子会社B社のプロパー社員である。上司の山元課長から新しい教育企画の検討指示を受け困っていたが、組織から距離を置く浮島課長補佐と出会い、彼の態度に反発しながらも課内教育の方向性を課長から了承された。ただし今後も浮島補佐の指導が条件であった。
  • 上野氏は人に頼りたくないと試行錯誤し、浮島補佐に反発した。しかし次第に彼を受け入れ、東和彦氏と斉藤五郎氏という二人の有名起業家と関係を深めた。浮島補佐から「企画の通し方」を教えてもらう過程で次第に上野氏は山元課長の想いと浮島補佐の本当のミッション、自分に求められていることに気付きはじめた。
  • 「皆の想いに応えたい」と強い気持ちを入れて書いた企画文章を「緩い」と浮島補佐から断じられ、途方に暮れた上野氏は、メンターである東和彦氏を頼った。しかし東氏も「主張の根本が検証できてないから弱い」と断じ、上野氏はさらに混乱した。
  • 東氏との会話の中で何かに気付いた上野氏は「クラウドコンピューティングが何故必要なのか。誰が求めるのか」の根本検証を行い、東氏から「悪くない」との評価を受け、これで浮島補佐の問に答えることができると安堵した。
  • しかしその後、東氏から「論理性だけではダメ。もっと大事なことがある。それがなければ新しい企画は廃案になる。それが分かるか」と言われ、答えることができなかった。

 東和彦氏の「問い」に上野氏は「どう考え、どう答えたのか」これを説明したい。