この連載では、「仕事を成功させるための思考術」を扱っている。前回は「資料が非論理的で分からない仕事」の3回目として、B社の上野主任が考えた企画用の文章をメンターの東氏が「主張の根本的な検証が済んでいないので弱い」とコメントした状況を紹介した。「失敗をもたらす10のダメ仕事」は次の通りである。

失敗をもたらす10のダメ仕事

    (1)目的が曖昧で作業手順がいい加減な仕事
    (2)情報が不足し鮮度も悪い仕事
    (3)他人をないがしろにする仕事
    (4)素人の浅知恵で判断する仕事
    (5)発想が貧困でつまらない仕事
    (6)自分の考えに酔いしれる仕事
    (7)社内調整が甘い仕事
    (8)資料が非論理的で分からない仕事
    (9)説明の辻褄があってない仕事
    (10)思想も志も見えてこない仕事

 今回は「資料が非論理的で分からない仕事」の4回目として、引き続き上野氏の事例を使い、資料作成の考え方、具体的事例について説明したい。

浮島氏と上野氏の事例「これまでのあらすじ」
18回からの続き)
  • 大手IT企業A社のソフトウェア開発子会社B社の開発部にプロパー社員の上野氏がいた。彼は設計のリーダだったが、あるとき上司の山元課長から教育企画を考えるように指示され困っていた。そんなとき、組織から距離を置く浮島課長補佐と出会った。
  • 上野氏は当初浮島補佐に反発したが、彼のサポートで課内教育の方向性を課長から了承された。ただし、今後も浮島補佐の指導が条件である。上野氏は自分の力で仕事を進めたいと思い、浮島補佐の言うことに反発しながらも次第に浮島補佐だけでなく、東氏と斉藤氏という二人の有名起業家の指導も受けるようになった。
  • 浮島補佐から「企画の通し方」を教えてもらった上野氏は、次第に山元課長の想いと浮島補佐の本当のミッションに気づき、自分に求められていることを自覚。能力を最大限に結集して、企画文章を作成した。しかし、上野氏の文章に浮島補佐は「緩い、会社に通る企画文章になっていない」とダメを出し、上野氏は落胆し混乱した。
  • 途方に暮れた上野氏は、東和彦氏の事務所を訪問し、浮島補佐から厳しいことを言われたことを説明した。同情して欲しかった上野氏に東氏は「主張の根本が検証できてないから弱い」と断じ、上野氏は返す言葉に詰まってしまった。

 浮島補佐だけでなく、東和彦氏にも「根本が検証できていない」「本質が分かっていない」と指摘された上野氏はどうしたのか、これを説明したい。