この連載では、「仕事を成功させるための思考術」を扱っている。前回は「社内調整」とは何か、「社内調整が甘いとなぜダメなのか」を述べた。「失敗をもたらす10のダメ仕事」は次の通りである。

失敗をもたらす10のダメ仕事

(1)目的が曖昧で作業手順がいい加減な仕事
(2)情報が不足し鮮度も悪い仕事
(3)他人をないがしろにする仕事
(4)素人の浅知恵で判断する仕事
(5)発想が貧困でつまらない仕事
(6)自分の考えに酔いしれる仕事
(7)社内調整が甘い仕事
(8)資料が非論理的で分からない仕事
(9)説明の辻褄があってない仕事
(10)思想も志も見えてこない仕事

 社内調整とは、社内の人を対象にした利害調整であること、立場が違う人同士は欲しい利益も違うので具体的な主張や意見、反論、その理由が違うこと、そして一般的な利害調整の方法論を使えば調整は比較的簡単であることを前回説明した。一般的な利害調整の方法論とは、(1)利害関係者の利害調査、(2)意見の調整、誘導といった手法のことである。

 今回は、この連載でたびたび登場する上野氏と浮島氏の事例で、この続きを説明したい。

上野氏と浮島氏のこれまでのあらすじ(第12回からの続き)
  • ソフト開発会社B社は、大手IT企業A社の子会社。B社のシステム開発部に勤務する上野氏はプロパー社員で、システム開発部門で設計チームのリーダを担当している。
  • あるとき上野氏は、上司の山元課長から課内の教育企画を指示された。しかし、良いアイデアが浮かばず仕事が辛くなった。
  • そんなとき、組織から距離を置いている浮島課長補佐と関わりを持った。上野氏は浮島補佐に反発しながらも彼からの指導を受け、山元課長に課内教育の方針を説明し、了承された。ただし、今後も浮島補佐の指導を受けることが条件となった。
  • 上野氏はなんとか独力で仕事を進めようとするが、結局は浮島補佐の指導を受ける状況だった。上野氏は浮島補佐の能力は認めていたものの、自分だけで課長に認められたいと試行錯誤していた。だが情報収集の件では、浮島補佐の指導を受けて会議室で言い争ってしまった。
  • 「今後、自分はどうすればよいか」。浮島補佐が帰った後、上野氏は長い間考えたが、答えは見つからなかった。そのとき、浮島補佐から来たメールを読んだ上野氏は、何かを思いつき、これまでの調査結果を改めて熟読した。そして、浮島補佐と、日本のIT業界をリードする起業家の2人に頼ることを決断した。