電通国際情報サービス(ISID)は2017年12月27日、トヨタ自動車向けに開発したVR(仮想現実)による自動車整備士の遠隔地教育システムの実証実験で効果を確認したと発表した。実証実験は2017年11月29日に、レクサスLSの技術講習会を対象としてトヨタ自動車のタイとフィリピン、インドネシアのアジア3拠点と多治見サービスセンター(岐阜県多治見市)で実施した。

 今回検証したのはISIDが2017年6月に開発した「遠隔地3D車両情報共有システム」。多治見サービスセンターにいる講師とアジア3拠点の自動車整備士の約50人が参加した。ヘッド・マウント・ディスプレー(HMD)を通じて車両の3次元設計データを共有。バッテリーの交換方法や新設部品の構成など、約10項目の研修を実施した。各拠点の整備士のアバターもバーチャル空間に表示されるため、講師は整備士が車両のどの部分を見ているかを確認しながら、音声会話機能を通じて教育できる。

車両内部の構造や部品を確認することができる
車両内部の構造や部品を確認することができる
出典:電通国際情報サービス(ISID)
[画像のクリックで拡大表示]
タイなど各拠点にいる整備士の様子が、講師はアバターを見ることで確認できる
タイなど各拠点にいる整備士の様子が、講師はアバターを見ることで確認できる
出典:電通国際情報サービス(ISID)
[画像のクリックで拡大表示]

 実車でなくVRならではの研修のメリットもある。バーチャル上で視点を自由に変えたり、断面で切断したりできる点だ。車両内部の構造を確認したり、特定の部品を回転させたりすることで、整備士が車両の構造や部品などについてより理解を深められる。

 トヨタ自動車はサービスメカニックと呼ぶ、各販売店で修理や点検を実施する整備士に対し研修を実施している。「自動ブレーキシステムやハイブリッドカーなど新製品や新機種が次々登場する中で、修理や保守、整備の仕方も変わってくる」(トヨタ自動車広報)。これまではそのたびに多治見サービスセンターに各販売店の代表者が集まって研修を受け、販売店の各整備士にフィードバックしてきた。今回検証したVRを活用した遠隔教育システムにより、世界の複数拠点に対して3次元映像を配信することでコストや時間の削減が期待できるという。