米エヌビディアが消費者向けGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)のデータセンターでの利用を禁止したことが2017年12月20日に分かった。消費者向けGPU「GeForce」シリーズの動作に必要なデバイスドライバーソフトウエアのライセンスに、データセンターへの導入を禁止する条項を追加した。深層学習(ディープラーニング)の処理に適したプロセッサーとしてGeForceをデータセンターに設置した利用者などから、戸惑いの声が上がっている。

 「データセンターへの導入の禁止。データセンターへの導入の目的では、本ソフトウエアのライセンスは付与されていません。ただし、データセンターにおけるブロックチェーン処理を行うことは許されます」とする条項を追加した。デバイスドライバーを利用するためにはこの規約に同意する必要がある。「データセンター」の定義は明示していない。

GeForceのデバイスドライバーのライセンスを変更した
GeForceのデバイスドライバーのライセンスを変更した
出所:エヌビディア
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 関係者によると2017年11月30日ごろに新たに追加されたもようだ。エヌビディアジャパンは公式ツイッターで「GeForce/TITAN系製品のデータセンターでの利用は以前から無保証」として、「その意味でデータセンターやクラウドサービスに利用することはお断りしてきました」と説明している。

 GPUを利用できるクラウドサービス「高火力コンピューティング」でGeForceを使うメニューを提供してきたさくらインターネットは「ここ2週間ほどで規約変更を知った。対応を検討している」(広報部)とする。

 エヌビディアは2017年10月に、「Tesla」シリーズを搭載したクラウドサービスで利用できる動作確認済みのソフトウエア一式を提供する「NVIDIA GPU Cloud」を始めたばかり。GeForceのデータセンターでの使用禁止をこのタイミングで明確に打ち出した狙いについて憶測が広がっている。エヌビディア日本法人の広報担当者は「現在事実を確認中」と回答した。

 エヌビディアはGPUで並列計算を実行するプログラムを開発しやすいソフトウエア開発環境「CUDA(クーダ)」を2007年から提供してきた。「Caffe」や「Chainer」、「TensorFlow」などの深層学習のフレームワークはCUDAを使うものが多く、深層学習を高速に実行したい企業や研究機関はエヌビディアのGPUを使うことがほとんどだった。深層学習のフレームワークを米AMDのGPUなど別のプロセッサーで動かす試みも一部で始まっている。

「GeForce」シリーズのグラフィックスボード
「GeForce」シリーズのグラフィックスボード
出所:エヌビディア
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■変更履歴
公開当初、4段落目に「1週間」とありましたが、正しくは「2週間」です。本文は修正済みです。[2017/12/21 12:25]