人工知能(AI)やビッグデータ分析関連のソフトウエア製品を手掛けるメタデータは2017年12月15日、AIのビジネス活用に関するセミナーを都内で開催。パネルディスカッションで、主要なユーザー企業がAIの学習データ作りの難しさを強調した。

左から旭硝子の伊藤肇情報システム部長、三菱UFJフィナンシャル・グループの扇裕毅デジタル企画部副部長、エイジアの藤田雅志経営企画室長、メタデータの野村直之社長
左から旭硝子の伊藤肇情報システム部長、三菱UFJフィナンシャル・グループの扇裕毅デジタル企画部副部長、エイジアの藤田雅志経営企画室長、メタデータの野村直之社長
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 「銀行員はデータを見るのは得意だが、自らデータを体系立てた形で作る経験はほとんどない。情報を囲いたがることも多い。しかも業務とシステムの双方に精通した人材は限られており、体力をかけて学習データを作るとなると属人化してしまう」。三菱UFJフィナンシャル・グループの扇裕毅デジタル企画部副部長は、AIで使う学習データ作成の難しさについて、こう語る。

 一方で扇副部長は「これから数年で大量採用世代の退職時期が来る。生産性を上げて、リカバリーしていく体制作りが不可欠だ。AIやRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)などにグループを挙げて取り組む必要がある」と決意を示す。「AIを導入するのは人減らしのためか?」という会場からの質問には、「企業によって目的は異なるだろうが、我々は人を減らすのが目的ではない。必ずしも人間がやらなくてもいい作業はコンピュータに肩代わりさせ、浮いた時間で顧客との接点を増やすのが大切だ」と答えた。

 旭硝子の伊藤肇情報システム部長は「AIに対する期待は非常に大きい」とし、理由の一つに扇副部長と同じく人材不足を挙げる。「当社の主要製品であるガラスは1500度以上の窯で作り、工程が非常に複雑。少しでも間違いがあると、大きなダメージを受ける。これまでは現場担当者の勘と経験に基づく技能でやってこられたが、ベテランの大量退職時期を迎えようとしている。AIを利用して技能を継承できればと考えている」(伊藤部長)。

 問題は学習データをどう確保するかだ。伊藤部長は「現場の担当者の頭の中からノウハウをどう引き出せばよいのか。日誌は手書きで、整理されておらず、学習データには不向き。どこから切り崩していけばよいのか、壁にぶつかっている」とした。そのうえで「どう進めれば、我々が期待するものに近づけるかを考えていきたい」と語る。