パナソニックは2017年12月15日、同社が開発して羽田空港の入国審査で運用が始まった「顔認証ゲート」を報道関係者向けに披露した。従来の指紋照合をベースにした「自動化ゲート」に比べ、審査時間が大幅に減ったうえに使い勝手も高まったという。デモでは同社社員が5秒程度で審査が完了した。

パナソニックが羽田空港の上陸審査場に3台納入した顔認証ゲート。報道関係者向けのデモでは、審査が5秒程度で完了する様子を示した
パナソニックが羽田空港の上陸審査場に3台納入した顔認証ゲート。報道関係者向けのデモでは、審査が5秒程度で完了する様子を示した
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 顔認証ゲートは(1)最初にスキャナー部分で入国者のパスポートの個人情報欄の文字とICチップ内の情報を読み取り、(2)ハーフミラー部分に内蔵したカメラで入国者の顔を撮影してICチップ内の顔画像と照合する。

 パナソニックは顔認証ゲートの開発に際し、「高齢者でも戸惑わずに審査を受けられるように、ユーザビリティーを高めた」(パナソニック コネクティッドソリューションズ社 イノベーションセンター システム部システム2課の窪田賢雄課長)。例えば、パスポートのスキャナーは向きに関わらず読み取れるように作りこんだという。

パスポートは上向き、下向きのいずれで置いても読み取り可能。スキャナーの周囲にICカードリーダー機能を組み込んでおり、スキャンと同時にICチップの情報を読み取って、個人情報欄にある鍵データと組み合わせて顔画像などのデータを取り出す
パスポートは上向き、下向きのいずれで置いても読み取り可能。スキャナーの周囲にICカードリーダー機能を組み込んでおり、スキャンと同時にICチップの情報を読み取って、個人情報欄にある鍵データと組み合わせて顔画像などのデータを取り出す
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 ハーフミラーの中にカメラ3台とディスプレーを組み込んであり、入国者の身長に合わせて正面に近いカメラで撮影する仕組みとしたほか、パスポート読み取り時はハーフミラーの最下部、カメラ撮影時はカメラ位置付近に案内を表示し、入国者の視線を無理なく誘導するようにした。顔認証ゲート上部には不正入国の抑制効果を狙ってか、監視カメラが存在をアピールするように下向きに設置されている。

 デモでは、正規のパスポートを持つ入国者は5秒程度で審査が完了した。一方、他人のパスポートを利用していたりマスクを装着していたりするとエラーになって通過できなかった。

ハーフミラー内にディスプレイとカメラ3台を組み込んでいる。パスポート読み取り時と顔認証時に入国者が適切な方向へ顔を向けるようアフォーダンスに考慮したほか、身長が高い人、低い人にも配慮している
ハーフミラー内にディスプレイとカメラ3台を組み込んでいる。パスポート読み取り時と顔認証時に入国者が適切な方向へ顔を向けるようアフォーダンスに考慮したほか、身長が高い人、低い人にも配慮している
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 顔認証ゲートは10月18日から羽田空港の入国審査で、日本人の帰国手続きを対象に3台導入されている。入国者がICチップ内蔵の日本のパスポートを所持し、身長が135cm以上であれば利用できる。顔画像はICチップ内に格納されているため、顔認証ゲートの利用に際して特別の登録は不要だ。パナソニックは「既に多くの日本人が(顔認証ゲートを)ビュンビュン通過している」(窪田課長)と利用状況に手応えを感じている。

 法務省によると、今後は他の空港にも顔認証ゲートの導入を進めていくという。顔認証ゲートの導入によって、これまで日本人の帰国手続きを担当していた入国審査官を、増加が続く外国人の入国手続きに振り向ける。現時点では顔認証ゲートにビザの読み取り機能などを実装していないが、「将来的には外国人の入国審査にも対応することを見越して開発している」(同)という。海外展開は現時点では想定していない。