人工知能(AI)やIoTに関する事業を展開するグリッド、伊藤忠テクノソリューションズ、TIS、富士通など11社は2017年12月13日、「AIビジネス推進コンソーシアム」を設立したと発表した。国内のAIサービスの開発力強化と産業分野でのAI活用の加速を狙う。

 都内で開催された設立記者会見で、発起人であるグリッドの代表取締役の曽我部 完氏は、AIを利用した国内のサービス開発状況に触れ、「実証実験や検証段階にある事例が多い。AIのビジネス活用を加速するには、一つの企業が単独で取り組むだけでは限界がある」と説明した。さらに「コンソーシアムでは、AIに取り組む企業間でノウハウや知見の共有を目指す」と設立趣旨を述べた。

グリッドの代表取締役である曽我部 完氏(撮影:下玉利 尚明、以下、同じ)
グリッドの代表取締役である曽我部 完氏(撮影:下玉利 尚明、以下、同じ)
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 曽我部氏は続けて、グリッドが取り組んできたAI関連事業を踏まえて、コンソーシアムの設立経緯を説明した。同氏によれば、産業分野でのAIサービスの利用では、製造工場やプラント設備など各社によって収集されるデータが千差万別だという。このため各企業ごとに、それぞれのデータに特化した独自のAIを開発しなければならなかったという。

 そのため、ある企業が単独でAI開発に取り組むと、たとえ基盤となるAI技術を開発できたとしても、他の企業のシステムに横展開することは難しい。曽我部氏は「当社が開発したAIサービスの技術やノウハウを他の顧客企業に横展開しようとすると、取り扱うデータが異なるため難しかった」と振り返った。

 こうした「産業分野のAIの個別性の高さ」(曽我部氏)が、産業分野でのAI活用の促進を妨げとなっていると感じ、AI開発に取り組む各社が基盤技術やノウハウ、ナレッジを共有できる枠組みが必要だと考えたと曽我部氏はコンソーシアム設立の経緯を説明した。

 AIビジネス推進コンソーシアムでは、参加企業間で「ソースコードや技術、ノウハウ、ケーススタディ、ユースケースなどを共有する」(曽我部氏)。現在、先行してグリッドのAI開発フレームワーク「ReNome」でユースケースが50個ほど公開されている。今後は、最適化処理や深層強化学習に関連したユースケースなどを追加していく。

ReNomeでソースコードやノウハウなどを体系化して提供。開発言語はPython。ソースコードの公開により機械学習の経験が少ないエンジニアでもモデル構築ができるようになるという
ReNomeでソースコードやノウハウなどを体系化して提供。開発言語はPython。ソースコードの公開により機械学習の経験が少ないエンジニアでもモデル構築ができるようになるという
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 それによって、ノウハウをチュートリアルとして体系化し、ユースケースとして提供。コンソーシアム参加企業がそれらを活用することでAI開発のスピードを高める。さらに、単独では応用や横展開が難しい技術やノウハウを、コンソーシアム参加企業間で共有し、他の参加企業の顧客向けに応用展開ができるかなども検討する。

 曽我部氏は、国内のAI開発では学術的な研究とビジネスとの間にギャップがあると指摘。産業分野でのAI活用の妨げとなっていたAIのアルゴリズムとビジネスとのギャップを埋めるのがコンソーシアムの役割だと改めて強調した。続けて、「2018年の1〜3月期には、参加企業の全社が何かしらのユースケースを公開し、それに付随するソースコード、技術、ノウハウ、ナレッジなどを参加企業間で共有できるようにしたい」(曽我部氏)と意気込みを示した。

将来的には各社で開発したAIアプリケーションを販売できる「マーケットプレイス」の構想もある。「スマホアプリのストアのようなイメージ」(曽我部氏)という
将来的には各社で開発したAIアプリケーションを販売できる「マーケットプレイス」の構想もある。「スマホアプリのストアのようなイメージ」(曽我部氏)という
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 今回のコンソーシアムに参加したのは、グリッド、伊藤忠テクノソリューションズ、TIS、富士通、伊藤忠商事、OSIsoft Japan、 zero to one、丸紅、丸紅情報システムズ、三井情報、三井物産の11社。

■変更履歴
記事公開時、第6段落で「50社分」としていましたが「50個」の誤りです。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2017/12/19 12:30]